MS、「最も未開拓」のミッドマーケットに照準

Microsoftの中堅企業向け新ブランド「Microsoft Dynamics」は、Great Plains、Axapta、Navisionなどのビジネスアプリケーションを束ねるものとなる。(IDG)

» 2005年09月09日 12時07分 公開
[IDG Japan]
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 米Microsoftは9月7日、中堅企業向け製品ロードマップの概略を明らかにした(9月8日の記事参照)。これには新しいソフトインフラパッケージ、「Microsoft Dynamics」ブランドのロールベースのビジネスアプリケーションが含まれる。

 スティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)、会長兼チーフソフトウェアアーキテクトのビル・ゲイツ氏など同社幹部は、レドモンド本社で行った初のBusiness Summitで、従業員数500〜1000人の企業向けの長期的なビジョンを発表した。

 コードネームで「Centro」と呼ばれるサーバパッケージは、次期版のWindows Server、Exchangeメールサーバ、管理ソフトSystem Center、セキュリティツールをバンドルする。出荷時期は2007〜2008年、Windows Serverの次期版(コードネーム:Longhorn)リリース後になる見込みだとWindows Server部門上級副社長ボブ・マグリア氏は語った。

 Microsoft Dynamicsは、ERP(エンタープライズリソースプランニング)、CRM(顧客関係管理)製品の新しいブランド名だ。これら製品は、以前はMicrosoft Business Solutions製品ラインの下にあった。Dynamicsブランドは、Microsoftの「Project Green」も含む。Project Greenは、各種のビジネスアプリケーションシリーズをOffice、SharePoint Portal Server、SQL Server Reporting Servicesと統合する構想のコードネームだ。

 より統合されたビジネスアプリケーション戦略に移行する中で、Microsoftは年内に「Great Plains」とCRM製品の新版を、「Microsoft Dynamics GP」「Microsoft Dynamics CRM」の名称でリリースする計画だ。Axapta、Navision、Solomonの新版はそれぞれ「Microsoft Dynamics AX」「Microsoft Dynamics NAV」「Microsoft Dynamics SL」として来年リリースされる見通しだ。

 製品の名称変更に加え、Microsoft幹部はDynamicsソフトを中堅企業で50の特定のユーザーグループ向けに調整する計画についても詳しく語った。例えば、営業マネジャー向けのユーザーインタフェースを用意する一方で、財務部門のマネジャーのための表示画面を作るといったことが考えられる。

 ゲイツ氏は、Microsoftは750社以上の中堅企業の従業員に対し、仕事のやり方やどうすればITが効果をもたらすかに関する聞き取り調査を行ったと語った。同氏によれば、従業員らは自分の仕事における役割をベースに構築されたビジネスソフトを望んでいる。また誰かに仕事を渡した場合に、そのワークフローが「モデルとしてシステムに組み込まれる」ことを彼らは求めているという。

 同社で中小企業市場・パートナー部門の戦略担当ジェネラルマネジャーを務めるジェームズ・ウッツシュナイダー氏は、中堅企業の領域において、明確にこうした企業向けにソフトを設計しているベンダーはほとんどないと指摘した。Microsoftは従業員の働き方に合わせたソフトを構築することにフォーカスする、とも。

 大型車両向け空調設備を手がけるRed DotのIT管理者ジョン−マーク・タッカー氏は、Dynamicsソフトが本当にユーザーの役割を包括できるのかと疑問を呈している。

 「ロールベースのアイデアだけではうまくいかないだろう。ここで定義されるすべての人――営業担当者や幹部――が、(同ソフトに組み込まれた)自分の役割にない機能を求めることは確実だと言える」と同氏。同氏は、Red Dotが最近、MicrosoftのNavisionを真剣に検討した後、Oracleのビジネスアプリケーションを購入した点に触れた。

 タッカー氏は、ミッドマーケット向けのCentroは素晴らしいアイデアだとしながらも、Red Dotがこれを購入するかどうかは疑問だと話す。約500人の従業員と200台のPCを抱える同社は、既にExchange、ファイル&プリント、Webアプリケーション、データベース、電子データ交換ソフトを走らせるWindows Serverを26台導入している。

 同氏は、値引きが大きく、Microsoftがこのパッケージのメリットを強く売り込みさえすれば、Centroをじっくり検討するだろうと話す。

 Microsoftのミッドマーケット製品は、ITスタッフの数が限られており、構成、メンテナンス、サポートが簡単な製品を必要としている中堅企業に訴求するだろうと複数のアナリストは語っている。

 Gartnerのアナリスト、ミカ・クラマー氏は、Centroは中堅企業のLonghornへの移行を手助けするかもしれないと語る。この製品はMicrosoftがIBMなどミッドマーケット製品を提供するベンダーと競争する上で役に立つだろう、とも。「これは前向きな一歩だが、Microsoftはこのメッセージを実行し、うまく調整しなければならないだろう。同社にはまだ、この市場を把握するためにやらなくてはならないことがある」

 マグリア氏は、中堅企業はIT分野において最も「未開拓」だと語った。同氏によると、Windows ServerやSQL Serverなどの製品を開発するMicrosoftのエンジニアは、ハイエンドなFortune 500社のニーズを考えている。これら企業の環境は要求が高いため、それを満たす製品はほかの顧客のニーズも満たすという前提に立っているからだという。

 だが同氏は、中堅企業にはまた違った問題があり、これまでのMicrosoftのソフトは、しかるべきレベルでミッドマーケット分野に照準を絞ってこなかったと語った。

 同氏はCentroサーバパッケージを、75ユーザー以下の企業の間で売れているMicrosoftの「Small Business Server」にたとえた。Centroは、トラブル処理に忙しく、サーバ製品を深く学ぶ時間がない「ITジェネラリスト」を1〜5人抱える中堅企業をターゲットにしていると同氏。

 Microsoftの既存の製品ラインは中堅企業のニーズを満たすが、「非常に使いにくい」とマグリア氏。Centroは購入と利用が簡単で、ITジェネラリストは時間を節約し、「ビジネス上のアドバンテージを伸ばすもの」にフォーカスできると同氏は語った。

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