コラム
» 2005年09月09日 19時15分 公開

求む、サイバー警察官

ネット犯罪が警察の在り方を変えつつある。官民問わずサイバー警察機能の整備が進んでいる。(IDG)

[IDG Japan]
IDG

 昔のコンピュータセキュリティはなんと古風だったことか。つい2〜3年前まで、セキュリティは活気のないへき地のような分野だった。誰も気に留めない、中米の小国で起きている飽き飽きする内戦のような。

 複雑で衝撃的なコンピュータ犯罪などというものは、ほとんど仮説で、起きる「かもしれない」ものにすぎなかった。サイバー犯罪は多々あったが、(今から思えば)どちらかというと実験的性格のもので、奇妙で注目を集める事件を除けば、その影響も、ほとんどの場合、技術上の迷惑程度にとどまっていた。

 組織犯罪の登場がこの状況を変えたというのが今や定説となっている。その変化の始まりは、本をただせば1990年代半ばまでさかのぼることができるかもしれない。

 一部には、何年も前からサイバー犯罪を懸念する人たちがいた。だから、まとめ方として簡略化し過ぎかもしれないが、大方の流れは、上記のとおりだといえる。

 興味深いがあまり言及されないこととして、突然の、だが完全に予測の範囲内だったプロフェッショナルなサイバー犯罪者の登場によって、国の法律のみならず、犯罪を水際で食い止める任務を負った当局機関の組織形態と性質までが、変化を始めたことが挙げられる。

 「サイバー警察官」は、多くの人がこれまで会ったこともない新しいタイプの警察官だ。今後10年間に、この言葉を聞く機会はますます増えていくとみて間違いない。わたしたち、あるいはわたしたちの子供の世代の中から、いずれサイバー警察官になる者さえ出てくるかもしれない。

 失うものがたくさんあり、サイバー犯罪問題との関係が深い国である米国では、役人がデジタル世界専門の警察官誕生の必要性を早くから指摘していた。

 1998年にさかのぼり、当時の米国家インフラ保護センターの責任者マイケル・バティス氏は、米国議会のある委員会で次のように述べた。「われわれは電子世界ではまだ真珠湾攻撃やオクラホマシティー爆破事件に匹敵する惨事を経験していない。だが統計とわれわれが扱う事件は、一部で予見されているサイバー攻撃に対する米国の危険な脆弱性を示している」

 2001年末までには、もう警鐘の音量はうるさいほどに高まり、米連邦捜査局(FBI)はサイバー犯罪専門部署を4つのサイバーアクションチーム(CATS)に編成した。サイバー犯罪は今やFBIの優先リストの第3位に浮上、過去4年間に(分かっている範囲で)数百人のスペシャリストが雇われている。今後、適正報酬で雇用可能な人材が不足することはないと仮定するなら、やがてその数は数千人に膨れ上がるだろう。

 最近では、民間企業がサイバー警察官の役割を補完し始めている。FBIがZotobワームの作者とみられる人物を逮捕するに至った手掛かりとなる情報は、Microsoftのサイバー犯罪部門が提供したものであったことが分かっている(8月27日の記事参照)。このワームはWindows 2000に影響を及ぼすものだったため、Microsoftの関与は意外ではない。だが、世界最大の企業である同社が、今やこの手の任務の社員を雇っているというのは興味深い。

 Microsoftはソフトメーカーではなかったのか? 21世紀のすべての大手ソフト企業の例に漏れず、Microsoftも今や私設警察機能を持つようになったのだ。

 今日、多くの国ではコンピュータ犯罪はまだ悪ふざけ程度のものと考えられている。その理由は恐らく、大衆が、それほど多くの犠牲者あるいは不快な影響を指摘することができないからだろう。多くの国で、デジタル犯罪の何たるかをよく理解した現場の警察官がほとんどおらず、時間の無駄のようだとまで言っているからだ。平均的な市民が運転をするようになる前の交通違反の取り締まりも、多分こんな感じだったのだろう。

 デジタル犯罪は、地球上のどこでも発生し得る。誰もが標的にされる可能性があり、1日24時間、毎日起こり得る。グローバル化の提唱者がインターネットを「世界規模の商取引を実現する新しいメディア」ととらえたときに想像していた世界とは、かけ離れている。

 「バーチャル交番」が登場する日も、そう遠くはない。

(By John E. Dunn, Techworld.com)

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