企業Blog:企業活性化の切り札か、時間の無駄か(1/2 ページ)

企業Blogを時代のすう勢と見、いずれ企業の常識になると見る向きがある一方で、アナリストの見方は違う。Blogが生産性の向上に結びつくまでには、まだ乗り越えるべき障害が多い、と言う。

» 2005年09月12日 14時53分 公開
[Jay-Lyman,japan.linux.com]

 BlogからBlogへ……同僚のBlog、得意先のBlog、競争相手のBlog……いったん読みはじめるといつまでもやめられない。あの人の考えもこの人の考えも、ほんの数クリック先にある。同僚に、競争相手に、得意先まで? まあ、いいだろう。だが、企業Blogを時代のすう勢と見、いずれ企業の常識になると見る向きがある一方で、アナリストの見方は違う。Blogが生産性の向上に結びつくまでには、まだ乗り越えるべき障害が多い、と言う。

 「数年前にBlogが流行りはじめてから、一部企業の間でこれをずいぶん取り入れる動きが出てきました。その目指す方向は実にさまざまです」と、Interarbor Solutions社の主任アナリスト、Dana Gardner氏は言う。企業Blogには、社内向けBlogと社外向けBlogがある、と指摘する。前者は主として社員間のコミュニケーションとコラボレーションを目的とし、後者は企業間における「コミュニティ意識と親近感」の醸成を目指している。

まだ揺籃期、成長はこれから

 社内向けBlogと社外向けBlogをともに取り入れている企業には、Sun Microsystems社やMicrosoft社も名を連ねる。だが、企業向け、従業員向け、顧客向けのどれをとっても、企業Blogはまだ揺籃期にある、とGardner氏は言う。

 同氏の見るところ、高度のIT技術を持ち、すでにフォーラムやユーザグループといったパラダイムを確立していた企業は、そこからBlog戦略を発展させている。だが、ほとんどのIT管理者はまだBlogに真剣に向き合っていない。

 「応用の可能性は無限ですが、現状はまちまちです」と言う。

 雰囲気にも懸念が漂う。「Blogの何たるかがわかっていない人」もいるし、Blogで従業員が何を発言するか、統制がきかなくて危険ではないのか、と心配する向きもある。

 だが、企業がBlogをいろいろに試してみるのには理由がある。この技術をインスタントメッセージングに重ねて見る人も多い。若者の暇つぶしから始まったインスタントメッセージングは、いまや企業に必須のツールとなるまでに発展した。

 「企業はいま実験中だと思います。従業員・パートナー・顧客にどう対応すればいいのか。従来のやり方に変革が必要だという思いが行き渡っていて、それが企業を実験に向かわせているのでしょう。まだ実験段階で、手応えは企業ごとにまちまちですが、自社の市場とサービスに関わるすべての人々に積極的に働きかけ、接触する必要があることは、どの企業も感じているようです」

 コアな得意先とファンに迅速かつ直接的に接触できる価値は、見過ごせないほど大きい。

 「誰がわざわざ[Blogにアクセスするという]行動を起こしてくれるのか。その人々こそ各企業にとっての宇宙です」とGardner氏は言う。さらに、Blog、RSSフィード、ポッドキャスティングの有効活用で、企業は仲介者(メディア、DM業者、など)を経ずに顧客と結びつけるはず、とも指摘する。

 企業Blogを試す企業は今後も増加し、RSSがさらに広まる下地を作るだろう、とGardner氏は予測する。

 「企業のコミュニケーション開発とビジネス開発を実践可能なものにするうえで、RSSは重要な柱です。企業はそれに気づきはじめています。今後 6〜18か月に大きな変化があるでしょう。誰かが誰かのオフィスに出向き、『RSS戦略って何だ。なんでわが社にはそれがないんだ』なんて会話が交わされることになりそうです」

 Gardner氏は、企業に定着しはじめている新技術の価値を強調する。

 「要するに、いまWeb上でやっていることをどう発展させるか、です。これは行って来るだけの両方向通路ではありません。全方向通路です。BlogやRSSは、対話が増えれば増えるほど、向かう方向も増えます。最終的には、コミュニティ意識や親近感の増大に行き着きます」

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