Free Standards Group、新メンバーの加入とLSB 3.0を発表

Free Standards Groupは先日、新たなメンバーの加入とLSB 3.0のリリースを発表した。LSBに準拠するとは、具体的にはどういうことなのかを含めてLSB周りの動きを見ていこう。

» 2005年09月26日 14時33分 公開
[Joe-'Zonker'-Brockmeier,japan.linux.com]

 Free Standards Group(FSG)は9月19日、Computer Associates(CA)、NTTデータOpen Countryが同グループのメンバに加わったことを発表した。また、Linux Standard Base(LSB) 3.0のリリースと、大手ベンダーによるこの標準のサポートについても、正式に発表した(関連記事参照)。エグゼクティブ・ディレクターであるJim Zemlin氏によると、主要なディストリビューションすべてが、LSB 3.0準拠として認定済みか、または認定に向けて進んでいる途中だという。ディストリビューションが認定を受けているベンダーや団体には、Red HatNovell SUSEDCC AllianceAsianuxなどがある。

 CAの上級副社長兼上級テクニカル・アドバイザーであるSam Greenblatt氏によると、同社は以前はLSBについて懐疑的だったが、最近になってようやく、「この仕様に現実味のようなものを感じるようになった」という。以前のバージョンのLSBは「海を蒸発させる」ようなものだったが、最新のバージョンは「バイナリ互換性のレベルまできちんと落とし込まれている」とGreenblatt氏はいう。

 同氏によると、複数の異なるLinuxディストリビューションをサポートしようとするのは、現時点では「悪夢」である。この問題は、異なるベンダーがサポートしているディストリビューションの違いに限ったものではなく、それらのディストリビューションのパッチレベルの違いも関係してくると話す。「われわれは、きちんとした秩序あるメンテナンスの方法を確立するよう試みています。そのため、誰かがパッチレベルを変更するたびに止まってしまうことはありません」

 この種の問題が生じているオペレーティング・システムはLinuxだけではない。Greenblatt氏によると、この問題は、Microsoft Windowsをはじめ、「稼動中にその場でパッチを適用するすべてのOS」に生じているという。

 LSBに準拠するとは、具体的にはどういうことなのだろうか。Zemlin氏の説明によると、LSBの仕様では、Linuxディストリビューションを構成する一連の構成要素(ファイルシステムの階層構造、C++コンパイラ、サポート・ライブラリ、パッケージ・フォーマットなど)について定められている。「さまざまなアーキテクチャ、さまざまなディストリビューションがある、複数のLinuxプラットフォームをターゲットにするのが非常に簡単になり、その手間が最小限に抑えられます」

 Zemlin氏によると、ある1つのLSB認定ディストリビューション用として作成されたアプリケーションが、他のLSB認定ディストリビューションでも修正なしで動作するとは必ずしも言えないものの、複数のLinuxディストリビューションでアプリケーションを動作させるために必要な作業は軽減されるという。

 LSBはなぜそんなに重要なのだろうか。Zemlin氏によると、「市場の拡大とともに、第2の囲い込みがひそかに生じてきている」とのことだ。これは「コードを触れる」ということとは関係がないもので、企業で使用しているアプリケーションが、特定のLinuxディストリビューションでのみ動作することになった場合に、その企業がそのディストリビューション以外を使用できなくなってしまう可能性があるというものだ。

 同氏によると、競合するベンダー各社の中から企業がベンダーを選択できるようにするために、LSBは助けとなるという。「エンド・ユーザーの観点から言うと、LSBは、不快な囲い込みを防ぐのに役立ちます。標準が定められていれば、その標準に準拠した複数の実装の中から選択できるようになるのです」

 ベンダーが認定を受けるプロセスはどのように進むのだろうか。Zemlin氏によると、各ベンダーは、Free Standards Groupが提供する一連のテスト・スイートを実行し、その結果を提出して検証を受ける。認定を受けた各ベンダーに対しては、LSB準拠の証明書が発行されるとともに、LSB準拠であることを示すための商標使用のライセンスが与えられる。

 LSBは、一般から参加できるオープンな開発プロセスを使用して作成されている。LSBの標準は誰でも利用でき、入手や実装は無償である。「この標準に含まれるいかなるものも、単一のベンダーに対する囲い込みを認めるものではありません」とZemlin氏は言う。

 LSB 3.0仕様のリリース・ノートによると、LSB 3.0は、「LSB 2.0と比べて技術的には大きな変更はない」とのことだ。ただし、この新しい仕様は、以前のリリースとのバイナリ互換性は保障されていない。また、新しいバージョンのGNU Compiler Collection(GCC)が必要であるため、古いバージョンのGCCでコンパイルされたアプリケーションは再コンパイルが必要である。1つのディストリビューションが複数のバージョンのLSB標準をサポートすることも可能である。

 LSBの仕様は18か月の開発サイクルとなっている。LSB 3.0の仕様がリリースされたのが今年の7月1日で、LSB 4.0の仕様は2007年のリリースに向けて進んでいる。

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