レゴブロックのように拡張できる分散ストレージシステム、米Isilon

独自のファイルシステムによって、画像や動画といった大容量データ向けの分散ストレージシステムを開発している米Isilon Systemsに、その製品の特徴を聞いた。

» 2005年09月29日 10時00分 公開
[ITmedia]

 「既存のSANやNASは、データベースや電子メール、クレジットカード決済処理データの格納などには適している。しかし、今後いっそうの増加が見込まれる画像や音声、動画といった『非構造化データ』の格納となると、クラスタストレージが必要だ」――米Isilon Systemsの社長兼CEO、スティーブ・ゴールドマン氏はこのように語った。

 Yankee GroupやIDCの調査によると、データベースに代表される構造化データに比べ、非構造化データの増加は著しいという。ある調査では、3年前は全データのうち5%程度に過ぎなかった非構造化データは、2007年末までに全体の30%強を占めるまでに増加すると見込まれているという。

ゴールドマン氏 コンプライアンスもさることながら、非構造化データ市場にも大きなチャンスがあると述べたゴールドマン氏

 しかも、構造化データと非構造化データでは性質に違いがあるため、単純に既存のストレージシステムに格納するのは難しい。「データベースをはじめとする構造化データのファイルサイズは小さく、ランダムアクセスが多く、かつ容量の増加を予測しやすい。これに対し音声や動画といったデータは、まずファイルサイズが大きい上に、急激に容量が増加する傾向がある」(ゴールドマン氏)。

 Isilonではこうした違いを踏まえたうえで、非構造化データに特化したストレージ製品を開発、販売している。分散ファイルシステム「Isilon OneFS」を搭載した製品「Isilon IQシリーズ」だ。

 Isilon IQシリーズは、3ノードから最大35ノードまで拡張可能なストレージシステムだ。1つひとつのノードは、いわゆるファイルサーバとして独立して動作しつつ、OneFSを通じて全体が1つのリソースとして動作する。

 このため、データ容量が急激に増加した場合には「レゴブロックを組み上げるのと同じように、ノードを追加してクラスタシステムを構成することで、性能や容量の拡張が容易な点が特徴だ」とゴールドマン氏。1つのシステムで容量は最大168TB、スループットも3Gbps以上を実現できるという。

 この考え方は、業界で主流となっているリソースの仮想化やユーティリティコンピューティングといったアプローチに重なるものだ。「Isilonのテクノロジはこうしたアプローチに適していると思う。ニーズに応じてシームレスに拡張でき、全体を1つのシステムのように動作させることができるため、『使った分だけ支払う』というユーティリティ課金モデルに自然に適合するだろう」(ゴールドマン氏)。

 Isilon IQシリーズではまた、データを各ノードに分散かつ二重化して保存する「N+2」の構成をとることにより、データの可用性を高めた。仮に同時に2つのノードに障害が発生しても、データは失われないという。

 実運用に当たっては、格納された大量のデータの中から必要なものをすばやく見つけ出す検索機能などもポイントになってくるだろう。Isilonではこの点を、専用ソフトを開発しているサードパーティと協力することで解決していくという。現に、2004年のアテネオリンピックで米NBCは、Isilon IQシリーズとBlue Order社の「Media Asset Management」ソフトを組み合わせ、1200時間に及ぶ競技映像の保存と検索を実現したという。

 既に、日本でもTBSでの導入事例があるという。「まずは基幹業務でデジタルコンテンツや非構造化を扱う業界がターゲット。メディアやエンターテイメント企業からフォーカスし、さらにヘルスケアや製造業などにも広げていきたい」(ゴールドマン氏)。ブロードバンドというインフラが整備されていることも踏まえ、東京エレクトロンを通じて販売していきたいという。

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