Skypeにクローンが登場(3/3 ページ)

» 2005年10月04日 19時19分 公開
[Nathan-Willis,japan.linux.com]
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ビルドで入手可能な代替製品

 しかし、ご安心あれ、Skypeを追いかけるGPLプロジェクトも幾つか存在する。紙幅の都合上、ここではその1つだけを紹介しよう。

 WengophoneはSkypeやGizmoと同様のインタフェースを持ち、機能も類似している。VoIP-to-PSTNサービス・プロバイダNeuf Telecom(フランス)の製品である。同社がWengophoneを提供する目的は、明らかに、SIPphoneとSkypeの関係と同様、SIP-to-PSTNゲートウェイ・サービスの販売促進である。Wengophoneクライアントの安定リリースはWindows用のみ。Linux for 86用はβ版、Mac OS XとPocket PC用クライアントは開発中だ。

 Linuxクライアントは、.debと.rpmバイナリ・パッケージで提供されている。全プラットフォーム用のソースも、Subversionリポジトリからダウンロード可能である。

 クライアントのインストールでは、Debianパッケージに問題はなかったが、.rpmパッケージはそうはいかなかった。バージョン・チェックもリンクもずさんで、人手が入らないとうまく動かない。メーリング・リストとフォーラムに質問したところ直ちに回答があり、次のリリースではこうした問題は改修されるという言質を得た。Wengophoneは、もちろん、いつでも、自分でコンパイルすることができる。

 Wengophoneは、AMR、AMR-WB、PCMA、PCMU、GSMコーデックを使う。試しにWengophoneからGizmoの利用者を呼び出してみたが、このとき使われたコーデックは唯一の共通コーデックであるGSMである。音質は、iSACによるGizmo同士やSkype同士よりも明らかに優れている。しかし、GSMコーデックはフォールト・トレラントではないため、ネットワーク・トラフィックが不安定になることがある。また、 8kHzでサンプリングしているため、音質の上限は「広帯域」コーデックのサンプリング周波数16kHzよりも低い。

 Wengophoneの構成パネルにコーデック・タブが用意されているところを見ると、他のコーデックも使えるか、あるいはすぐに使えるようになるものと思われる。この点についてフォーラムに質問したところ、ユーザーがインストール可能なコーデックを次期リリースに向けて開発中だという。また、現行リリースでは、音声・マイクロフォン・呼び出し音などに使われるオーディオ装置を指定することができない――もっとも、私のマシンではデフォルトで十分だったが。いろいろと欠点を挙げたが、Wengophoneはまだ登場したばかりだ。製品レビューで云々するのは時期尚早である。

 このようにWengophoneには欠点があるが、GPLであるということから、Gizmoより将来性があると私は考えている。その理由は幾つかある。まず、Wengophoneは、変更すれば、どのSIPゲートウェイ(現在だけでなく将来も含めて――この分野で親会社がいつまでもあるとは限らない)にも対応可能だ。また、サード・パーティーがオーディオ・コーデック(たとえ有償でも)や新しいプロトコル(IAXやXMPPの統合など)を加えることもできる。さらに、誰でも、Wengophoneを他のオペレーティング・システムや新しい機器に移植できるからである。

 こうした点は、Skypeが生活必需品としての価格政策により利用者の乗り換えを座視している中、Wengophoneの明らかな利点となる。つまり、その間、オーディオ・コーデック問題がWengophoneを含むすべてのオープンソース・ソフトフォンにとって克服すべき最大の課題となる。

おわりに

 わたしはSkypeの行く先が短いとは決して思わない。しかし、VoIPの成長余力は大きく、5年後は、おそらく最も規模の小さい製品でも、その利用者数はSkypeの現在の利用者数よりも多いだろう。だが、Skypeの類似製品はSIPをサポートしており、この点でSkypeよりも一歩先んじている。

 ただし、半分オープン・半分クローズドのソリューションには、サポートする価値はない。VoIPソフトフォンが広く普及するのを願う人々にとって、特許化され使用料が必要なオーディオ・コーデック(ビデオ・コーデック)だけをサポートするSIPクライアントは、一歩前進一歩後退である。

 もし商用OSを使用している友人からSkypeについて尋ねられたら、Gizmoではなく、使い勝手が良くGPL下にあるクロスプラットフォームのクライアントを推薦するとよいだろう。わたしはと言えば、オープンソース・クライアントやプロプライエタリ・クライアントがフリーの音声コーデックを速やかにサポートするよう手だてを講じたいと思う。

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