薄れゆくプラットフォームの境界線(2/2 ページ)

» 2005年10月21日 17時05分 公開
[Jay-Lyman,IT Manager's Journal]
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Microsoftへのしっぺ返し

 SQL Serverなどの一部の開発プラットフォームのコストが、クロスプラットフォーム開発や代替プラットフォーム開発の成長を後押ししていると、マンダー氏は指摘する。これには、Microsoftへの反感が拍車をかけている側面もある。

 「Microsoft は、Visual StudioとSQL ServerにExpressバージョンをリリースして、.Net 2.0でソフトウェアを開発する作業の苦痛を緩和しようとがんばっています。ですが、ソフトウェア開発は、ちょっとした遊び心に訴えるものなのです。Linux用のツールが成熟してきたので、開発者は普段の開発環境の外までスキルを伸ばそうと思っています。あるいは、.NetアプリケーションをライバルのOS上で開発することで、Microsoftにしっぺ返しをするのが単に面白いというだけかもしれませんね」

 ソース管理ツールベンダー米SourceGearのソフトウェア開発者エリック・シンク氏によると、同社はVaultソフトウェアの開発という「非常にWindows中心のパス」からスタートしたが、最近になってJava、Linux、Macintosh向けにツールを開発するようになった。

 「弊社はソース管理ツールを販売していますが、クロスプラットフォームのサポートはソース管理ツールにとって通過点の1つです」と彼は言う。Linuxサポートを希望するクライアントへの販売は、もしそのサポートが「部屋の隅でLinuxマシンの前に座っている1人」に限定されるとしたら、成立しないだろうと彼は説明する。

 「基本的には、弊社が提供するのは迂回策です。クロスプラットフォームは、事業戦略の柱ではありません。実際には、LinuxでもMacでも稼働します。そのための手段は用意します。Mac OSやLinuxの利用者が楽しんで使っているわけではありませんが、将来はそうなるといいですね」(シンク氏)

 クロスプラットフォームの作業は、他のプラットフォームやEclipse(Vaultの移植を推進中)などの開発コミュニティーが盛んになるにつれて、ますます重要性を増していると、シンク氏は語る。

 「両方(Mac OSとLinux)とも伸びています。衰えているなどとは思いませんね」(シンク氏)

 障害となるもの――主としてコストの追加とクロスプラットフォーム開発の難しさ――があることは認めつつ、市場からの要求により、同社の戦略に占める役割は大きくなるだろうと、彼は予測する。

 「ITマネージャーとして見ると、開発コストは本当に増加します。開発者として見ると、クロスプラットフォーム開発はハードです。複数のプラットフォームで動作するものを書こうと努力しても、1つのプラットフォームしか使わない顧客には何もメリットを提供できないのですから。擁護するのが難しい見返りです」(シンク氏)

 米FormScapeの上級Linux開発者ゲーリー・ゲイル氏は、これと同じような警告を発する。同社の大企業向け文書管理ソフトウェアCovusの150万行にのぼるWindowsコードをSolaris、AIX、Linux向けに移行する作業で、開発者の最初の仕事になったのは、異種プラットフォームを徹底的に調査して、詳細な要件を洗い出すことだった。

 「コードを最初から最後までチェックして、問題になりそうな場所を特定する必要がありました。オペレーティングシステムに依存する箇所を見分けなければなりません。オペレーティングシステムのことなどわかるわけがない、とは言っていられないのです」(ゲイル氏)

 しかし、ゲイル氏はこう付け加えた。クロスプラットフォーム開発は途方もない難事業になる可能性はあるが、全般的な開発プロセスは改良される方向にあり、あるプラットフォームで苦労を経験したチームは、別のプラットフォームではもっと楽にソリューションを実現できる、と。

 「すべての環境について驚くほど発想が鍛えられます。適切なコーディング手順の重要性が実感されようになります。心に平穏が訪れます。コードが明快になります」(ゲイル氏)

 開発者は「Javaや.Netのような大食らいのプラットフォーム」よりもPHPのようなシンプルで単刀直入な開発スキーマや言語を好むと、InterarborのGardner氏は言う。どのような単独のプラットフォームよりも、クロスプラットフォーム開発のトレンドはWeb開発に味方し、主流のオープンソース・プラットフォーム、環境、コミュニティー(Eclipseなど)で書かれるスクリプトは増えている。Unix開発からLinux開発へ向かう自然の移行は従来から変わらないが、オープンソースのツールとプラットフォームがWindowsサーバ開発に利用されることも増加の一途をたどっている。

 「Windows開発環境と、Windowsサービスを利用しながらもWindowsに完全には依存しないオープンソースやアプリケーションを組み合わせて使おうとする動きが増えています」

.Net開発者が増え、オープンソース開発者が増えるほど、コードは良くなる

 クロスプラットフォームの.Net開発は.Netコミュニティーに力を与え、必ずしもVisual Studio開発者の減少とLinux開発者の増加にはつながらないと、Code Projectのマンダー氏は言う。

 「どちらかといえば、Visual Studio開発者を増やすだろうと思いますね。Linux開発者は使い慣れたツールと環境を利用して.Netプラットフォームをターゲットにできます。 Visual Studioは、現在でも間違いなく.Netを開発する最強のツールですから、.Netでの作業を楽しむLinux開発者がVisual Studio .NetとVisual Studio 2005の新機能に魅力を感じても不思議はありません」(マンダー氏)

 FormScapeのゲイル氏は、支配的なプラットフォームになるとは予想しないものの、Linuxとオープンソース・ソフトウェアが、開発者全般とともに、コーディングの多様化から利益を得る立場にあると見る。

「ますます一般化し、ビジネスの一部となることが増える傾向にあると思います。既に現実のものになっていますし、さらに進む一方でしょう。特にオープンソースは、市場に進出する原動力となり、Linuxが利益を得ることになるでしょう」(ゲイル氏)

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