緊急事態発生! BCPの初動フェーズですべきこと(2/3 ページ)

» 2005年10月31日 09時44分 公開
[水野宏美,ITmedia]
BCP発動フェーズのポイント

 新潟県中越地震では多くの企業が甚大な被害を被った。この地震で製造業が復旧に要した時間は平均して1カ月程度と言われており、想像より短期間で済んだとされている。しかし、三洋電機の子会社である新潟三洋電子は、ほかの企業と比べても操業再開までに非常に時間がかかっている。このことなどが災いして三洋電機の2005年3月期の連結最終損益は1200億円超の大幅赤字となったが、この事例は多くの企業にとってBCPに対する取り組みの重要性を再考するきっかけとなったはずだ。以下では、実際に緊急事態が発生した場合の初動にあたるBCP発動フェーズを紹介するが、ここでの対応はBCPにおいて非常に重要なフェーズとなる。その後の復旧を大きく左右するこのフェーズで何をすべきかを示していこう。

発生した事象の把握と連絡

 ひとたび緊急事態が発生した場合、何よりも優先して行うべきは事実関係の把握である。この遅れはそのまま初動の遅れへとなるため、結果として事態が深刻化しやすくなる。自然災害の発生であればニュースなどでその事実を知ることもできるが、社内のシステム障害などは事態の把握が遅れることも珍しくない。また、情報漏えいに至っては、外部からの指摘で判明することも多い。そのほか、危機につながる事象が検知されたとしても、第一発見者が事象を看過した結果対応が遅れ、大きな問題となるケースもあり得る。いずれの場合にも共通するのは、できるだけ早いタイミングで経営層またはリスクマネジメントを行う部署に連絡を入れることが重要となる。

 この事前準備として、どういった事態が発生した場合に誰に連絡を行うかを緊急連絡網の整備と併せて決めておくとよい。この考えは、前述した対策本部の設置基準の策定に似ている。異なるのは、対策本部の設置基準はいずれも対策本部の設置というイベントにつながるため各項目で重要度に大きな違いがないが、連絡体制の整備では危機レベル別に定義し、それに応じた最終連絡先を区分しておかないと、すべての報告が経営層に伝達される事態となる。経営層には対外的に大きな影響が発生する事象が報告されるようにしておくべきだが、軽微な影響については部長や課長などへの報告にとどめるなど、レベル分けが肝心となる。

 緊急連絡網の整備でも、冗長性が求められる。例えば、連絡が付かない場合にどうするか、それ以前に電話が不通の場合は、といったリスクに対応するためだ。これは基本的にはプライマリーとセカンダリーを定めておくことで対応できる。ちなみに、連絡はメールをプライマリーにしてはならない。緊急性を要するものなので、まずは電話や口頭などの直接的な方法で早急に伝え、そのあとにメールや書面など、即時性はないがあとで参照できる方法で伝達すべきである。

連絡すべき項目

 ここまでで、どういった場合に誰に連絡すべきかが定まった。しかし、具体的にどういった内容を連絡するべきか。必要な事項としては次のようなものが挙げられる。

  • 発生場所
  • 発生事象
  • レベル判定
  • 対象システム
  • 復旧見込み
  • 原因

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