ネットサービスのトレンド変遷インターネットサービスの新基準(1/2 ページ)

ネットビジネスの構築から運用に求められる“総合的なノウハウ”。SOHOから大企業までが模索するであろう大きなテーマだ。このオンライン・ムックでは3つのパートに分け、構築から運用、サービス事例分析までを幅広くカバーしていく。

» 2005年11月07日 00時00分 公開
[渡辺裕一,ITmedia]

 11月から約6カ月に渡って連載するオンライン・ムック「インターネットサービスの新基準」。今回からのパート1ではサービスを支える基盤(詳細後述)について触れる。続くパート2では、サービス指向が顕著な現代のネットサービスのトレンドと着目すべきポイント、パート3では実サービスからの事例と分析を行う予定だ。現在のネットサービスの仕組みと動向を知り、各社がどのような点を差別化ポイントとしているのか? そして事例に見るトレンドの分析へと視点を移していく。

 連載1回目となる今回は、基盤編としてパソコン通信からインターネットへの変遷期におけるホスティングサービス(レンタルサーバサービス)の移り変わりや、求められてきた機能の変化、インターネットが普及した現在はどのような利用形態になっているのか、などを解説する。今回の記事のポイントは、基盤サービスの仕様や需要の変化を知ることで、現在のトレンド背景を理解することだ。ここでの“基盤”とは、「レンタルサーバ」や「ホスティング」と称するハードウェア(サーバ)を指している。

サーバスペースからサービスのスペースへ

 最初に理解しておきたいのは、ホスティングサービスの始まりは、インターネット普及期にインターネットサービスプロバイダー(ISP)が「ホームページサービス」と称し、付帯サービスとして提供していた点だ。現在では、インターネットそのものの利用者が増え、比較的、費用対効果の見合うビジネスメディアとなったといえる。このため、多種多様なサービスが登場しているわけだ。提供側に向けたオールインワンのサービスも用意され、短期間にサービスインが実現可能なプランも増えたため、“アイデア”が必要なものの、ネット開業へ向けた構築の敷居は格段に低くなっている。

 従来までのホームページスペースでは、Webページ(htmlファイルや画像ファイル)を保存しておくためのサーバスペース、という感覚だった。ここ10年間でどのような変化があったのだろうか?

 いちばんに挙げられる変化は、MySQL、PostgreSQLなどを使ったデータベースはもちろん、Webアプリケーション構築に容易なPHPの利用環境、その上で構築するECサイトのテンプレートなどがパッケージ化されていることが多いことだ。これらの需要背景には、「サービス提供者が、仲介なく情報を早く配信する」という共通課題がある。このため、手間がかかる1ページごとに作り込む形態が少なくなっているのだ。

 データベースから必要な情報を見やすく取り出せるシステムを構築できることも「ホスティングサービス」に求められている。オンラインショッピングはもちろん、ブログもこのようなシステム化が支えている。さらに企業内情報とのかかわりや拡張性などを考慮すれば、Webサービスとの連携も必須となってくるだろう。

 このように企業の基幹サービスとさえ位置付けられるサイト運用が増えてきたため、24時間止まることがない堅牢性もいっそう重要視されている。サービス内容の多様化と堅牢性の実現は、現代の2つの柱といえるものだ。

利用層とオンラインショップ動向が牽引してきた

 現在へと至るネットサービスの世代背景を見てみよう。1990年代、パソコン通信からインターネットへ移行する段階でのホスティングサービス(レンタルサーバサービス)は、ほぼすべてが企業向けだった。その理由はコスト面が大きい。

 具体的なものを挙げよう。1995年前後のインターネット関連誌を見返すと、多くのインターネットプロバイダー広告が目に入る。比較的閉ざされたパソコン通信から、世界へとつながるインターネットへと視点が移り始めた世代だ。例えば、企業で基盤利用されていたサン・マイクロシステムズのSolaris 2.4をインストールしたNetraの場合、SPARC II/70MHzプロセッサ搭載で約100万円という価格設定だった。もちろんハードウェアだけではサービスが成り立たず、構築してサービスインするにはかなりの投資が必要だったと考えられる。

 そうとはいえ、牽引役となったのは「ホームページサービス」を利用してオープンソースソフトウェア(OSS)などを使い、情報を扱いやすいようシステム化を進めてきたSOHOや企業などだ。低コストで即効性を重視すれば、独自ドメインにはこだわらず、そして自社内運用よりも専業ホスティングへのアウトソーシングが好ましいと考えるのが自然だ。これらは基本的に現在も変わりないが、最近では特に自社運用が可能な企業ばかりでなく、メインの業務がITとはかかわりのない異業種企業がインターネットサービスへと数多く参入している。このため、独自ドメインによるブランドを重視しても、構築や運用面の問題からホスティングサービスを利用する需要が拡大しているのだ。

多くの企業がドメインの放つブランドに注目した

 co.jpなどのドメイン名が企業の持つ固有資産というイメージは従来からあった。ホームページで情報発信する企業が増えてくると、背中を押されてサイト開設を迫られたケースが多いはずだ。それでも、新規にWebを介して利益を上げることは容易ではなく、数ページの情報発信では多くの情報に埋もれてしまう。ドメインの価値はイメージ先行という側面が強かったが、現在は企業にとって必須のものになったと考えるのが自然だ。

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