Sun、PostgreSQLをSolaris 10に統合

SunがPostgreSQLをSolaris 10に統合することを発表したが、このことがもたらすであろう今後の動きをPostgreSQL側のメリットも含めて考える。

» 2005年11月30日 00時33分 公開
[Stephen-Feller,japan.linux.com]

 11月上旬にSun Microsystemsは、PostgreSQLデータベースのSolaris 10への統合を30日以内に開始し、そのフルサポートをすぐに提供する、そして向こう数カ月の間にはPostgreSQLをOSに完全に統合させると発表した。

 SunのSolarisソフトウェアのディレクターであるクリス・ラトクリフ氏によれば、PostgreSQLはMySQLに続いて2番目にSolarisに統合されるデータベースだが、MySQLよりもOSの重要な部分を占めると予想されているそうだ。「187ものオープンソースアプリケーションをSolarisにパッケージ化するなんて、まるで“1日24時間、週7日サポート”のようです」とラトクリフ氏は語った。

 PostgreSQLは顧客がSolarisへの統合を望んでいたアプリケーションの一つだとラトクリフ氏は話す。オープンソースソフトウェアの中では特にリクエストが多かったという。多数のオープンソースアプリケーションがSunによってサポート済みであることを考えれば、PostgreSQLのSolarisへの追加は納得のいく話だ。

 「システム環境に必要な費用を減らす方法を検討する顧客は、ますます増えているようです。これを実現するために、多くの顧客が、オープンソースアプリケーションを多数使用してシステムを構築する方法に注目しています。今では顧客もオープンソースデータベースを実際に検討し始めているし、あらゆる企業がライセンス費用の支払いを心配することなく、ローエンドのインフラストラクチャでこれらを使用できるという状況にまで到達しようとしています」。

 より多くの選択肢とサポートを、企業顧客から要望の多いオープンソースにおいて提供することは、Sunが推し進めてきた現行の戦略の一つだとラトクリフ氏は言う。「顧客からリクエストの多かった選択肢をデータベースにもう一つ追加することで、Sunは自分たちの製品を必要としている顧客に対して、“使用するすべてのソフトウェアを、一カ所で強力にサポートしますよ”と、大々的にアピールしているのです」。

PostgreSQL側のメリット

 開発者のジョシュ・バーカス氏によれば、Ingresデータベースから派生して1986年に開始されたPostgreSQLプロジェクトは、BSDライセンスのデータベースソフトウェアであり、FreeBSDおよびOpenBSD、そしてAppleのDarwinなど、既にほとんどのLinuxディストリビューションで利用できる。

 バーカス氏は、SunによるPostgreSQLプロジェクトへの関与を歓迎し、とりわけSunがフルサポートのサービスを行なうという計画に賛成している。「最も重要なメリットは、Sunがこのプロジェクトを認めると公表したことです。これによって利用者が増える可能性があります」。

 「ここ数年、“PostgreSQLを使っていることを公にされたくない”と主要なユーザーたちが考えていることに頭を悩ませていました。“Sunも認めたソフトウェア”と言えるようになったことで、データベースの選択肢について検討している企業にも、多大な影響があるはずです」。

 Sunとの共同作業で特にメリットが大きいのは、Sunの素晴らしく経験豊富なエンジニアたちが支援してくれるおかげで、PostgreSQLの開発者が見つけた問題点をすぐに解決できる点だとバーカス氏は言う。「より多くの機能とより優れたパフォーマンスという目標に向かって進むためには、実に困難な問題に取り組む必要があります。Sunのデータベースチームの中には、20年以上の経験を積んだデータベースシステム・デザインの専門家もいます。彼らの専門知識を利用することがわたしの望みです」。

 ラトクリフ氏によれば、SunはPostgreSQLを自社のDTraceフレームワークと連携させ、Solarisとどのようにやり取りしているかを、Sunが開発中のグラフィカルインタフェースを介して管理者が確認できるようにする予定だ。この機能によって、管理者は目に見えないボトルネックや、システムのパフォーマンスを高めるために特に変更が必要な部分を知ることができるそうだ。「ソフトウェアの“カーネル内のテレメトリ”によって、アプリケーションがSolarisおよびカーネルとどのように相互作用しているか確認できるため、最適化と移植性に関して改良すべき部分を見つけ出せます」(ラトクリフ氏)。

 「Sunの顧客はDTraceによって、アプリケーションのパフォーマンスを文字どおり“最大50倍”も高めることができました。この効果は数時間で実感できることも少なくありません」とラトクリフ氏は言う。「2つのアプリケーションのリンクと、PostgreSQLの開発コミュニティーへの資金の提供によるメリットを享受できるのは、Solarisユーザーだけではありません。私たちが数々の修正を加えることで、もう一方のプラットフォームのパフォーマンスも間違いなく向上するはずです」。

 ラトクリフ氏は、Solarisに別のデータベースアプリケーションを統合することで、SunとOracleとの長年にわたる関係に亀裂が生じるとは考えていない。Sunは最近、Oracleと共同で中小企業向けサーバ用のデータベースパッケージを開発している。「SunとOracleは素晴らしい関係を築いています。お話したように、SunはPostgreSQLに対して多くのことを行なっていますが、これらの中には現在進行中のものもあれば、既に(Oracleと)やり終えたものもあるのです」(ラトクリフ氏)。

 OracleはSunのSolaris 10へのPostgreSQLの追加に対する広報担当からのコメント発表を辞退している。

 Solaris 10にPostgreSQLを追加しても、Oracleが提供する何かに対して直接競争力を持つことはないかもしれない。しかし、Oracleアプリケーションと互換性があり、PostgreSQLの機能を拡張したプロプライエタリなEnterpriseDBなどのOracle対応ソフトウェアに対して、PostgreSQLが競合することはないだろうか。EnterpriseDB Corpの最高経営責任者であるアンディ・アスター氏は、EnterpriseDBがPostgreSQLの競争相手になるとは思わない。また、Sunがこのデータベースを統合したからといって、EnterpriseDBがSunと競争することはないと述べた。むしろこれはチャンスであり、顧客が(EnterpriseDBの基盤である)PostgreSQLを使用することで、より多くの顧客が自分の製品を目にするのではないかと期待しているそうだ。

 「EnterpriseDB がPostgreSQLと決して競合しないのも同じ理由です。EnterpriseDBはネイティブのPostgreSQLとは大幅に異なるものです。SunがPostgreSQLを選んだことで、私たちの顧客ターゲット、あるいはEnterpriseDBに興味を持った人の中にも、 PostgreSQLに詳しい人が非常に多くなるでしょう。ですから私たちは、ネイティブのPostgreSQLの上に追加した価値に重点を置いて EnterpriseDBをご案内すればいいのです」(アスター氏)

 アスター氏は次のように付け加えた。「SunがMySQLなどほかのオープンソースデータベースに加えてPostgreSQLをSolarisに選んだという事実は、PostgreSQLが信頼性、拡張性、および企業での使用に適しているという点で他を大きく引き離していることを強く印象付けました。私たちの製品はPostgreSQLを基に開発したのですから、この結果は喜ばしいものです」。

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