注目集まる「ITIL」、運用管理は日本版SOX法を見据えた視点も重要に2005年アクセストップ10

運用管理といえば、戦略的な業務とは掛け離れた地味な仕事と見られがちだった。ITILの枠組みを使って見直すことで、運用管理に攻めの視点を盛り込める。また、日本版SOX法とのからみでも今後ITILは注目される(ランキング8位)。

» 2005年12月26日 11時30分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 エンタープライズチャンネルで2005年最も注目された記事は何か? 年間ページビューランキングで8位にランクインした特集「攻めのシステム運用管理」で取り上げた「ITIL」(Information Technology Infrastructure Library)にこれからも注目したい。

 企業のIT部門にとって運用管理は重要な業務の1つだ。しかし運用管理といえば、これまで戦略的な業務とは掛け離れた後ろ向きな仕事と見られがちだった。7月に掲載した特集「攻めのシステム運用管理」では、このようなネガティブなものでなく、むしろ積極的に改革することで戦略的なものにしよう、という視点で主にITILを取り上げた。

 運用管理のフレームワークとしてスタンダードになりつつあるITILは、技術の名前ではなく、仕事のやり方を標準化することで運用管理を最適化するためのベストプラクティスがまとめられた書籍だ。1980年代後半に英国政府がシステムの見直しを行った際のノウハウなどをまとめたのがITIL始まりとされるが、そこには運用業務のノウハウとエッセンスが詰まっているため、今注目されている。(関連記事)

 ITベンダーは、ユーティリティーコンピューティングなどシステムによる運用管理の自動化を推進しているが、ITILはその一方で、仕事のやり方そのものに注目し、効率化を図ろうというものといえる。このような視点で運用の仕事を見直すと、現場で使われる言葉が統一されていなかったり、ノウハウが人に依存したままになっていることに多くの企業が気付くはずだ。

 この夏に、ITILの書籍の執筆を担当した米CAのブライアン・ジョンソン氏に会う機会を得たが、1980年代の英国政府でもこのような問題がシステムの最適化をはばんでいたという(関連記事)。「英国政府の取り組みから20年が経過しているが、技術やシステムは変化しても、運用管理の仕事が抱える問題の本質は変わっていない」とジョンソン氏。運用管理の効率化の観点から業務の見直しを根本的に行う必要性は今でも高い。仕事を定義し直して、現場に「システムのお守り」という意識ではなく、ITを提供するサービス業としての意識を植え付けていくことも必要だ。

 こういった運用管理の標準化は今後、2008年3月期から導入されるとみられる日本版SOX法をにらんで、さらに重要度を増していくことにもなりそうだ(関連記事)。日本版SOX法とは、財務諸表の信頼性を確保するために内部統制を求める。多くの仕事がITシステムに支えられるようになった今では、システムの運用管理もその監査の対象となってくるのだ。

 規制が運用管理の標準化を加速させるのは、攻めの考え方とは相容れないかもしれないが、どちらにしてもシステムの運用管理を見直す必要性は確実に高まってきている。年間8位にランクインした理由には、このような背景を見越した動きもあるのかもしれない。

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