オランダのオープンソースを推進するHOSP

Holland Open Software Platform(HOSP)は、オランダで活動しているオープンソースソフトウェア、オープンコンテンツ、オープンスタンダードに関するすべての推進団体の連携を目指している。

» 2005年12月28日 11時11分 公開
[Koen-Vervloesem,japan.linux.com]

ユーザーと企業とオープンソースプロジェクトの連携を目指すHolland Open Software Platform(HOSP)は、今年オープンソース・カンファレンスを開催したが、今後は、カンファレンスだけでなく、オープンソースの支援と推進においてさらに積極的な役割を果たしていくことを明らかにした。

 HOSPは昨夏正式に発足した団体で、次の4つの目標を掲げて、現在オランダで活動しているオープンソースソフトウェア、オープンコンテンツ、オープンスタンダードに関するすべての推進団体の連携を目指している。

  1. 情報技術におけるオープンスタンダードを支持すること。オープンな情報処理を推進すること。オープンソースソフトウェアを奨励すること
  2. 同じ目的を共有する団体、企業、個人、コミュニティーに便宜を図ること
  3. 地域レベルおよび全国レベルのさまざまな推進団体の連携を目指し、情報交換の場を提供すること
  4. 諸外国における同様の推進団体に対する接点となること

 HOSPが新しい活動に乗り出そうとしているのは、これまでの活動が順調だからである。Holland Open財団は、Holland Open Software Conferenceという3日間に及ぶ国際的なカンファレンスを2005年5月に開催した。対象者は開発者・管理者・ユーザーで、約450名が参加した。HOSPのロブ・ペーター氏によれば、「オープンソースが重要な意味を持ついろいろな分野、つまり、産業界、行政機関、ユーザー、オープンソースコミュニティーが出会う場を目指した」のだという。同じくHOSPのレオン・ゴマンズ氏は次のように説明する。「さまざまな立場の人たちを集め、普通とは違うカンファレンスにしました。普段は顔を合わす機会のない人たちが打ち解けた雰囲気で出会い、自分には思いもよらない発想の異なる意見を聞けるようなカンファレンスを計画したのです」

 次回のカンファレンスは、2006年6月15日に開催する予定だという。趣旨はほぼ同じだが、ペーター氏によれば、「一つ違う点があります。コミュニティーとプログラマーにもっと焦点を当て、開発者の国際協力にかなりの重点を置きます」。そのため、次回カンファレンス期間中の土曜日を開発者が協力できるような場にするという。ゴマンズ氏は、「オープンソースの開発者は、当日、情報を交換できるだけでなく、一緒にプログラムすることだってできます。革新というのはこういう形で生まれるものですし、それを促進したいのです」と言う。

 HOSPは、一般に関心が持たれている活動について探ってもいる。HOSPの会長ジョ・ラヘイ氏は、全般的な目標とは別に、取り組みたい活動を具体的に示した。「現在オランダにあるオープンソース活動のための共通の行動計画とメーリングリストを設定したいですね。Holland Open Software Conferenceは今後も毎年開催しますが、そのほかに、テーマを絞ったカンファレンスも開催したい。ライセンスとか特許とか製品とかに絞ったカンファレンスです」

 また、多様な媒体を通じてオープンソースに関する情報を流すという。「Webサイト、メーリングリスト、カンファレンス、研修コース。これらすべては、オープンソースソフトウェアとオープンスタンダードを推進するための手段です。いずれ、最良実践や、見本となるようなプロジェクト、解説を参考資料として収集したいと考えています。こうした活動を通じて、オープンソースソフトウェアとオープンスタンダードに対する信頼を高めたいのです」

 しかし、既存の推進団体を「乗っ取る」意図はないと強調した。「目指しているのは、そうした活動を支援し強化することです。現在進行しているプロジェクトや立ち上がりつつあるプロジェクト、あるいは完了したプロジェクトの情報が得られるような場を提供することなのです。今は、多くのプロジェクトが互いを知ることなくバラバラに活動しています。もし、そうしたプロジェクトが互いの活動を知れば、協力して体力をつけることができるでしょう」

 HOSP自体の活動としては、オランダ社会におけるオープン情報技術の利点を紹介したいという。「主に取り組みたいのは、オープンなソフトウェアシステムと開発手法によって地域の知識を獲得すること、そして情報をデジタルに処理し保管することで永続化できることについてです。何よりも、教育・科学・行政の情報はだれにでもアクセス可能でなければならないことを訴えたい」

 しかし、助言活動で特定のソリューションを勧めることはないという。「『必ずオープンソースソフトウェアを使いなさい』とは申しません。その場に応じてソリューションに関する意見は提供しますが、特定のアプリケーションやサプライヤーやプラットフォームの善し悪しを示すことはありません」

オープン性から生まれる革新

 情報通信技術が革新を可能にするというのが、HOSPの立場だとラヘイ氏は言う。「ICTなしに、革新はありえません。しかし、ICTの開発は自らの手で掌握しなければならない。さもないと、すべての活動を外部のサプライヤーに依存することになります。そして、複雑化する結果、自らの活動を掌握することができなくなりなります。自身のソフトウェア、オープンスタンダード、オープンコンテンツ、オープンソースソフトウェアを自らの手のうちに置くことが重要なのです」

 「今、ほかの分野でもオープンソースコミュニティー方式の採用が広がっています。オープンリサーチ、オープンエデュケーション、オープンコンテンツ(Creative Commons)。こうした分野では、知識を流通させる推進力として強力なコミュニティーが生まれるでしょう。HOSPの目的は、そうしたコミュニティーのために必要なビジネスモデル、あるいは、それらが生んだ新しいビジネスモデルを育成し、新たに生まれた知識を広めることにあります」

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