SOX法を考える「今なぜ、内部統制なのか?」丸山満彦の「内部統制」講座(4/5 ページ)

» 2006年01月11日 08時13分 公開
[丸山満彦,N+I NETWORK Guide]

SOX法成立以降の米国の状況

 さて、米国企業では、SOX法に基づく監査がすでに行われている。第404条に基づく経営者の報告を行うため各企業では、コーポレート・ガバナンスや業務プロセスに組み込まれた内部統制を洗い出し、不足している内部統制の導入を行っている。業務プロセスについては、基本的には業務フローを作成し、業務フローに組み込まれた内部統制を識別する。それを財務報告を正しくするための要素(経営者の主張又はアサーション:監査人にとっては要証命題としての監査要点となる)に結び付け、不足している内部統制を洗い出し、導入することになる。

 なお、財務報告に係る内部統制の監査の結果であるが、その有効性についての不適正意見が出されているケースが多い。財務諸表の不適正意見とは異なり、上場が廃止となることはない。ただし、格付け会社が投資格付けを引き下げている場合がある。格付けの引き下げは資金調達コストに影響するため、企業の損益にも影響することになる。

日本の状況

 これまで、米国の状況を見てきたが、日本の現状について簡単に説明する。なお、はじめにお断りしておくが、日本では現在、金融庁企業会計審議会内部統制部会において、内部統制の考え方や内部統制監査の必要性の有無や、内部統制監査をする場合の監査基準の整備などが検討され、公開草案を公表し意見募集をした後、最終報告書をまとめている段階である。状況はまだまだ流動的であり、以降の内容は、筆者が本稿を執筆している時点(2005年12月1日)での公開情報に基づいていることをご了承いただきたい。

東京証券取引所上場規則の改正

 2003年に改正された東京証券取引所上場規則により、上場している企業は、「適時開示に係る宣誓書」および添付資料(会社情報の適時開示に係る社内体制の状況を記載した書面)の提出が義務付けられた。内容については、東京証券取引所のWebサイトにおいて公開されているので、そちらを参照されたい。

証券取引法における

代表者による確認書

 2003年3月28日に「証券取引法施行令の一部を改正する政令」が公布され、2003年3月31日には、「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」が公布された。この改正の中で、有価証券報告書におけるディスクロージャーの観点から、コーポレート・ガバナンスの強化を図ることを目的とした制度が導入された。「コーポレート・ガバナンスに関する情報」の開示と「代表者による確認書」である。前者については今回は省略することとし、後者の「代表者による確認書」について説明する。

代表者による確認書

 この制度は、会社の代表者(代表取締役、委員会等設置会社は代表執行役)が有価証券報告書の記載内容の適正性を確認した旨等の確認書を有価証券報告書に添付するという制度である。会社の代表者は下記の事項を「確認書」に記載し、自署・捺印することとなる。代表者個人としての確認であるため、会社代表者印ではなく、個人印が押印される。

  • 有価証券報告書の記載内容が適正であることを確認した旨
  • 財務諸表などが適正に作成されるシステムが機能していたかを確認した旨およびその内容

 この規定の適用は、2003年4月1日以降に開始する事業年度にかかわる有価証券報告書および半期報告書である。ただし、強制適用ではなく任意適用である。しかしながら、大手銀行は、金融庁の要請に基づき2003年3月期より代表者による確認書を提出している。図1は、代表者による確認書の記載例である。

図1 代表者による確認書の記載例

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