SOX法を考える「今なぜ、内部統制なのか?」丸山満彦の「内部統制」講座(2/5 ページ)

» 2006年01月11日 08時13分 公開
[丸山満彦,N+I NETWORK Guide]

 米国では、証券市場における個人の資産運用比率が高いことから、Enron事件後の証券市場に与える影響は国全体に大きな影響を及ぼすものとなった。米国の企業年金は401kに代表されるように、年金加入者が一定の範囲において自己責任で運用を行う確定拠出型が多い。このため、金融市場の信頼の失墜や、それに続く暴落などは国民生活に著しい影響を及ぼすことになる。

 Enron事件はこのように、米国経済のインフラともいえる金融市場の信頼を失墜させたという意味で、資本社会を揺るがす大事件だったわけである。

SOX法の成立

 Enron事件をはじめとする一連の企業経営者による粉飾決算などの不祥事を重く見た米国議会は、2002年に異例の速さでSOX法を議員立法し、その成立を見た。

 SOX法の正式な名称は「U.S. Public Company Accounting Reform and Investor Protection Act of 2002」であり、「米国公開企業会計改革および投資家保護法」というのが適切な訳語といえるだろう。この正式名称からも分かるとおり、SOX法は企業の不正会計を防止するという観点のみならず、証券市場の適正化をその射程においているため、その規制内容はきわめて広範なものとなっている。このためSOX法は、1934年の証券取引法の改革以来の大改革であるという人もいる。

 規制の詳細については、米国証券取引委員会(US Securities and Exchange Commission:SEC)や公開会社会計監視委員会(The Public Company Accounting Oversight Board:PCAOB)の規則に一部を委ねており、SOX法以降の規制を理解するには、この法律はもちろん、SECやPCAOBの規則などもあわせて理解する必要がある。ちなみに同法は、議案立法した議員であるSarbanes氏とOxley氏の名前を取って「Sarbanes-Oxley Act of 2002」、それを短縮して、SOA、SOX法、SO法、米国企業改革法と呼ばれることもあるが、本稿では、「SOX法」の表記に統一する。

SOX法で求められること

概要

 先述のとおり、SOX法は証券市場の適正化をその射程に置いているため、その規制内容は広範に及ぶ。全11章から構成される同法の概要を表1に示す(日本語の名称は正式名称の仮訳)。

表1 SOX法の内容

 この規制の中で、企業に直接影響があるものは、以下のとおりである。

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