カナダ総選挙の候補者がFOSS支持を表明Trend Insight(1/2 ページ)

カナダの総選挙に目を向けてみると、FOSSを堂々と支持している主要政党の候補者が一人いる。この人物、新民主党のマチュー・アラード氏にFOSS支持の経緯や選挙運動におけるFOSSの役割などについてインタビューした。

» 2006年01月23日 17時13分 公開
[Bruce-Byfield,japan.linux.com]

 「候補者がFOSS支持を表明」といっても、フリーおよびオープンソースソフトウェア(FOSS)がカナダ総選挙(1月23日投票)の争点になっているわけではない。主要政党――自由党、保守党、新民主党(NDP)、ケベック連合――は、いずれも、FOSSに関する立場を明らかにしていないし、間もなくFOSS支持を含む綱領を発表すると噂されている新興の緑の党にしても、WebサイトでMicrosoft Word形式の現行綱領を提供しているところを見れば、そのFOSS支持は形だけに違いない。こうした中、FOSSを堂々と支持している主要政党の候補者が一人いる。マニトバ州セントボニファスのフランス語選挙区から立候補したNDPの若き候補者マチュー・アラード氏である。選挙戦のさなか、FOSS支持の経緯や選挙運動におけるFOSSの役割などについてインタビューした。

マチュー・アラード マチュー・アラード氏

 アラード氏は、NDPが政権の座に着いているマニトバ州の住宅供給社会事業省でエグゼクティブ・アシスタントを務めている。大学では政治学を学んだが、公務のかたわらマニトバ大学およびウィニペグ大学の行政学修士課程で勉学を続けている。マニトバ州新民主党若手の会の役員を務めるアラード氏はすでに政治活動も始めており、2004年6月の総選挙ではセントボニファスから立候補した(このときの得票は3位)。また、2005年3月のマニトバ州 NDP大会では、FOSS宣言の採択で先頭に立ち、FOSSを州レベルの政策に導入した。大方の見るところでは、北米の与党の中でFOSSを支持したのはマニトバ州NDPが最初である。

 アラード氏がFOSSを知ったのは、セントボニファス・カレッジに入学した年のことだ。「使っていたラップトップが――Microsoft Windowsの95か98でした――ある日、クラッシュしてしまったのです。レジストリの問題でした。それで、代わりのものを探したのです」とアラード氏は当時を回想する。その後、ウィニペグに本拠を置くPrairie Linux User Groupに加わったのだが、このユーザーグループはマニトバ州NDPのFOSS宣言を紹介する記事の中でアラード氏を「古くからのメンバー」と呼んでいる。アラード氏が試用したLinuxディストリビューションは幾つかあるが、最終的にDebianに落ち着いた。「このディストリビューションなら、私でも再インストールせずに維持管理できたからです」。Debianでは多くのパッケージが使える点も気に入っているという。それ以来、Debianは、自宅でいつも使うオペレーティングシステムになった。

社会民主主義とFOSS

 アラード氏の属する新民主党は社会民主主義の党だ。移民政策の改革、公的医療制度の維持、環境保護、中等後教育の拡充などの政策を掲げている。アラード氏はFOSSの支持者にもさまざまな政治的立場があることは認めるが、FOSSの支持はNDPの政策と調和すると考えている。

 「市民的権利と自由を尊重する政治体制にとって、FOSSの考え方は共感できます。また、政治的に左寄りの人はFOSSに関心を持つでしょうね。ソフトウェア開発の方法がコラボレーティブで共同的ですから」

 アラード氏がこう考えるのは、マニトバ州NDPでFOSS宣言の採択を推進した際の経験からのようだ。マニトバ州NDPではFOSS支持者として良く知られているアラード氏だが、宣言に好意的な発言をする人の多さに「驚いた」という。中には、この問題を承知しているとは思いもしなかった人もいたという。そして、「あれほど多くの説明や活動は不要だったかもしれません」と振り返る。大会に参加した代表の中にはセキュリティを心配する者もいたが、宣言は「圧倒的多数」で採択された。

 アラード氏は、いつの日か連邦NDPもFOSSを承認してほしいと考えている。すでに党は「FOSSについて理解しており、できるだけ使う方向で動いています。しかし、党則にはなっていません」。アラード氏は、連邦NDPについては云々する立場にないがと断った上で、連邦NDPでもFOSS宣言は採択されるだろうと述べた。アラード氏の予想では、主たる問題は、急を要する課題が多いためにFOSS活動について議論する時間がないことだという。

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