カナダ総選挙の候補者がFOSS支持を表明Trend Insight(2/2 ページ)

» 2006年01月23日 17時13分 公開
[Bruce-Byfield,japan.linux.com]
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セントボニファスでの選挙運動でFOSSを活用

 「私の選挙運動では、FirefoxやThunderbirdやOpenOffice.orgなどを使っています」とアラード氏は言う。NDPの選挙区責任者は、当初、FOSSプログラムは準備や管理に手間がかかるのではないか、Microsoft Office形式を使っているほかの選挙区やコミュニティーグループとのファイル交換に支障があるのではないかと心配した。しかし、アラード氏は、その心配が杞憂であることを示して説得した。実際、アラード氏が指摘するように、選挙運動で使っているアプリケーションはいずれも「対応するプロプライエタリソフトウェアと差し替え可能」である。

 また、アラード氏のWebサイトではCreative Commons Attribution-No Derivativesライセンスの下でコンテンツを公開しているという。例外は、NDPのロゴなど、連邦NDPから借りているものだけだ。

 アラード氏としては、GNU/Linuxなどのアプリケーションも、場合によってはMySQLも使いたかったという。しかし、選挙運動員が対応しきれないだろうとNDP選挙区責任者が心配し、アラード氏はWindows上でFOSSプログラムを動かすことで妥協した。

 選挙事務所でFOSSを使っていることに対するボランティアの反応を尋ねると、アラード氏は「不満は聞いていませんよ」とだけ答えた。

 アラード氏が幾らFOSSを推奨しても、アラード氏自身が認めるように、FOSS問題は選挙運動の主要な論点にはなっていない。全候補者を集めた会議では議題にならず、アラード氏が会った有権者も話題にしない。「話題にのぼるようなテーマではないのでしょうね。これまで多くの人を訪ねてきましたが」

 とはいえ、間接的ながらも、FOSS支持は選挙活動にプラスだとアラード氏は考えている。アラード氏がFOSSに関心を持っていることは良く知られており、そのことが話の糸口になることがあるというのだ。「政党というのは、何とかして多くの有権者に接触しようとするものです。FOSSは、(これまでは)疎遠だった人々と話のできる話題であることは確かです」

今後のFOSS支援活動

 セントボニファスは伝統的に自由党の地盤である。しかし、有権者は連邦自由党政権をめぐる醜聞に嫌気しているため、この選挙ではアラード氏にも当選する可能性がある。アラード氏は、当選したらNDPの議員総会でFOSSを勧めたいと言う。さらに、「いろいろなグループと連携して、FOSS支持の問題やフリーソフトウェアコミュニティーについて話し合います。いろいろなグループと共同で、彼らが進むべき道と考えていることについて話したいのです」。 アラード氏が属するNDPがカナダ連邦の与党になる見込みはないが、少数与党と連立する可能性は大きい。そうなれば、連邦レベルではじめてFOSSが議題になるかもしれない。いずれにしても、議会でNDPが与党を支持することと引き替えに、FOSS政策で与党の譲歩を引き出すのは比較的容易だろう。

 落選した場合は、次回の選挙での立候補を検討することになるだろうが、現時点ではまだ決めていないという。いずれにしても、行政の中でFOSSの使用を推進していくことは確かである。「私はフリーソフトウェアのユーザーですから、支持するのは自然なことです。問題点を見つけたら、例えば、標準に準拠していないために動作が不適切なWebサイトを見つけたら、私としては放っておけませんね」

 最後に、アラード氏はフリーソフトウェアは「欧州ではカナダよりも一般的になっています」と述べた。FOSSの推進にはさらなる活動が必要だとアラード氏が考えているのは明らかである。

ブルース・ベイフィールド氏は、研修コースの開発者でありインストラクター。コンピュータ・ジャーナリストでもあり、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalの常連。


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