特集
» 2006年01月25日 14時00分 公開

こんな時期だからこそ知っておきたい企業のファイナンス:金融機関との協調による経営再建 (1/2)

大幅な債務超過に陥ってしまったある事業者。取引のある金融機関からは抜本的な経営再建計画を求められているが……。リレーションシップバンキングなど地元金融機関の融資体制と併せて対応を考える。

[第一法規]

lalalaw当社はスキー客を顧客とする宿泊業を営んでいます。しかし、最近は暖冬の影響で雪が少なく、その上、施設の老朽化により宿泊客が減少し、ここ2年間連続赤字を計上し、小幅な債務超過に陥っています。
 このような中、取引銀行である地元のA信用金庫の借入金の約定返済が困難になってしまったため、返済条件の緩和を依頼しました。私としては、この苦境を切り抜け、将来の収益性を確保する自信がありますが、A信用金庫の融資担当者から、「御社はこのままでは、今後の増改築資金の融資も難しくなる。早急に抜本的な経営再建計画を立てるように」と言われました。  会社には私の個人資金もつぎ込んでいますが、私には親からの相続によって財産もあり、また、借入金の中には毎年借り換えているコロガシ借入金があります。どう対処したら良いでしょうか。


lalalaw貴社としても、いたずらに手をこまねいているわけにはいかないでしょう。この状況に対し、何の対策も立てない会社では、A信用金庫も支援のしようがありません。

 最近の金融庁の中小金融機関に対する姿勢は、リレーションシップバンキングなど地元金融機関の融資体制を評価するようになっています。そこで、貴社もA信用金庫の担当者に当社の実情を包み隠さず話し、その協力を得て経営再建計画書を作成する必要があります。

 その場合には、社長からの個人的な資金借入を資本金とみなし、またA信用金庫からのコロガシ借入金は担当者と十分話し合った上で、思い切って「劣後ローン」として資本金とみなしてもらいます。その上で、それらの返済を外したところで、将来営業キャッシュフローによる返済計画を立てることができます。

解説

 最近、地方の金融機関では、「リレーションシップバンキング」という言葉がよく聞かれます。地方の金融機関が、その機能を発揮するには、前提として、日ごろから金融機関と債務者の間のコミュニケーションを高める必要があり、そのことにより債務者の経営実態を適切に把握し、的確な債務者管理に努めようというものです。

 金融庁の検査も、なにも数字だけで企業を評価するものではありません。特に、中小零細企業については、地元金融機関の企業訪問や経営指導などの実施状況についても検証し、それが良好な場合には、次のように扱うことになっています。

1.企業の成長性について当該金融機関の評価を尊重

 金融庁の検査では、債務者区分の判断において、企業の技術力、販売力、経営者の資質や、これらを踏まえた成長性を評価する場合に、企業訪問、経営指導などで得た情報に基づく当該金融機関の自己査定を尊重するということです。

 つまり、ここでは数字に直接表れる定量分析だけではなく、数字に直接表れない経営者の資質などの定性分析による評価も尊重する姿勢が見られます。このような定性的な分析ができるということは、地元金融機関が貸付先とのコミュニケーションの密度の高さにより、借入先の経営実態の把握など、的確な借入先管理が前提になります。

 中小・零細企業の信用力や成長性を評価するに当たっての経営者の資質として、次のような項目も考慮されます。

  • 過去の約定返済履歴などの取引実績
  • 中・長期経営改善計画の作成に対する取り組み姿勢
  • 決算書類の質の向上に対する取り組み姿勢
  • ISOなどの経営の質向上への資格取得状況
  • 人材育成への取り組み姿勢
  • 後継者の存在

2.金融機関による中小企業支援の実績を貸倒引当率に反映

 要管理先の中小・零細企業のうち、金融機関が企業・事業の再生支援を実施し、その実績データが存在する債務者については、別にグループ分けをして、貸倒引当率を引き下げることを可能にしています。そうすることで、地元金融機関が潜在的な収益力を持っている企業を積極的に支援することを期待していると言えます。

 また、金融庁の検査マニュアルの運用面では、中小・零細企業について、赤字や債務超過というような表面的な数字を見て債務者の現況を判断するのではなく、キャッシュフローを重視することを明確にしています。

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