インターネットが普及し、消費者が考えるネット購買の商品レンジは日に日に広がっている。この時代に企業が他社への差別化を図る上で最も重要になるのがコンタクトセンターである。
オンラインムック「コンタクトセンターが企業の顔になる」。
上村陽子(ITRアナリスト)
顧客中心のビジネスは、一般消費者をずいぶんとぜいたくにさせてしまった。消費者が企業に期待するサービスレベルは以前よりも高くなり、対応の遅れや不適切な応対には厳しいクレームを寄せてくる。このようなビジネス環境の中で、顧客接点として常にサービスレベルの向上を求められるのがコンタクトセンターだろう。
本稿では、進化のスピードが著しいコンタクトセンターの過去、現在、未来を、3回にわたって解説する。
「PCの修理を頼もうとメーカーに電話したところ、グラフィックボードの交換が必要と診断された。あいにく在庫切れだが、シンガポールから取り寄せて翌朝には届くので、昼には宅配便で自宅まで届くという。修理は別会社のサポートスタッフが行うが、荷物が着く時間帯に到着するよう手配しておきますと言われた。対応が早くて驚いた」
つい最近、知人から聞いた話である。「修理の電話をすると、たらい回しにされる」といったイメージが強い中で、昨今のコンタクトセンターの進化はめざましいものがある。ここ10年ほどで急速に拡大したコンタクトセンターは、上述のようなメーカーの技術サポートに加えて、通信販売の受付窓口、金融商品の問い合わせ窓口などさまざまなケースで導入され、顧客サービスの中心的存在となっている。
一般消費者の立場で考えれば、PCを選ぶにしろ、荷物をお願いする宅配業者を選ぶにしろ、製品、価格によほどの差がない限り、注文時の対応や万一の際のサポートが手厚い方を選ぶのは当然だろう。対応が良ければまた利用したいと考えるし、不適切な対応が企業のブランドイメージ低下させることもある。コンタクトセンターのクオリティは、企業のビジネスに大きく影響を及ぼすほどになっている。
コンタクトセンターが広く導入されるようになったのは1990年代のことだが、当時は、問い合わせ窓口を一元化することで社内のバックオフィスの業務を効率化することに主眼が置かれていた。
もちろん、顧客へのサポートを手厚くする目的も含まれているが、今ほど、「顧客サービスレベルの向上」が強く全面に出ていたわけではなかった。ここで、1990年代後半以降、コンタクトセンターがどのように進化してきたかを概観してみよう。
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