オンラインの世界に必要なのは「信頼回復」RSA Conference 2006

米VeriSignのストラトン・スクラボス氏、Symantecのジョン・トンプソン氏はいずれも、損なわれつつあるオンラインの世界の信頼回復が必要だと訴えた。

» 2006年02月17日 00時47分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 「コミュニティの力が必要」「オンラインには信頼が欠かせない」――RSA Conference 2006の基調講演に登場した米VeriSignの社長兼CEO、ストラトン・スクラボス氏、そしてSymantecの会長兼CEOのジョン・トンプソン氏はいずれも、インターネットへの信頼が損なわれつつある現状に対し、業界全体の取り組みが重要だと強調した。

 スクラボス氏はまず、インターネットはほんの10年たらずで世界中に普及し、生活のさまざまな側面に欠かせないインフラになりつつあると指摘。しかし一方で「さまざまなセキュリティ上の脅威も増加している。理由は簡単だ。資産がオンラインに移動するにつれ、悪者たちもオンラインに進出してきた。彼らはいつも、お金の匂いのするところに移動するものだ」とした。

スクラボス氏 米VeriSignの社長兼CEO、ストラトン・スクラボス氏

 トンプソン氏も同様の意見だ。特に企業にとって、インターネットは生産性向上を支援する大事なツールとなっている。仮にオンラインバンクが、昔ながらの店舗方式に移行するとすれば、コストは何十倍にも膨れ上がってしまうだろうという。しかし、このメリットを享受するには「信頼」が必要だ。

 「セキュリティは企業にとって、競争上の優位性にもなれば、不利な点にもなる。もし信頼できるデジタル環境の構築に失敗すれば、直接的な損害のみならず顧客の信頼をも失ってしまう」(トンプソン氏)

 とはいえ現実は逆の方向に向かっている。「攻撃者の手口はより高度化し、より組織化されたものになっている。ID情報の盗難が増加し、コンシューマーの信頼は損なわれようとしている」(スクラボス氏)、「大規模に広がるワームやウイルスは減ったが、代わりに攻撃は、よりターゲットを絞ったものになっている。ユーザーの情報を狙い、技術的に高度なものが増加してきた」(トンプソン氏)

 ユーザーがオンラインの世界から離れていかないようにするには「信頼」が必要だと両氏とも強調した。「信頼こそオンラインの世界の基盤だ」(トンプソン氏)

トンプソン氏 Symantecの会長兼CEOのジョン・トンプソン氏

 その具体的な手段としてスクラボス氏は、リリースしたばかりの新しい認証システム「VeriSign Identity Protection」(VIP)を挙げた。これは、Microsoftの認証技術「InfoCard」とも連携するといい、Internet Explorer 7上で強固な認証を実現しつつ、フィッシングサイトなどを見破れる仕組みを提供するという(関連記事)

 一方トンプソン氏は、「1つの企業だけで対応していくのは不可能。信頼できるオンラインコミュニティを構築し、あるWebサイトが信頼できるものかどうかを確かめられるような『第六感』を実現していく必要がある」と述べた。

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