Microsoftが狙うビジネスアプリのWeb 2.0

Office 2003をERPにリンクさせるためのツール「Dynamics Snap」への動きがGotDotNetサイトで盛んだ。さらにテストサイトSandboxには、ソースコードを参照するために登録者が相次いでいる。MSはコード開示で何を学ぶのか。

» 2006年02月28日 19時17分 公開
[Mary Jo Foley,eWEEK]
eWEEK

 Microsoftのビジネスソリューションズ(MBS)部門と同社のパートナーらは、同社のERP(Enterprise Resource Planning)とCRM(カスタマーリレーションシップ管理)アプリケーション用の新たなWebサービスアドオンをテスト中だ。このテストでは、各種の「Microsoft Shared Source」ライセンスの下でコードを利用できる。

 Microsoftは2005年の秋以来、これらのアドオンを同社のソースコードホスティングサイト「GotDotNet」のワークスペースに密かに追加してきた。同社によると、MSN事業部と同様、MBS部門も潜在的な新製品およびコードサンプルを「Sandbox」と呼ばれるテストサイトを通じて共有することにより、これらの製品やコードのテストを行っているという。

 MBSが2月20日に正式発表した直近のSandboxプロジェクトは、Microsoft Office 2003をERP製品の「Microsoft Dynamics CRM 3.0」および「Dynamics AX 3.0」(旧名称はAxapta)にリンクするためのツールファミリー「Dynamics Snap」を対象としたもの。同社では、これらの最初のSnapツールのコードを「Shared Source Permissive」ライセンスの下で提供している。また、Shared Sourceで追加提供するSnapツールも準備中だという。

 ワシントン州レドモンドに本社を置くMicrosoftによると、Permissive License(「Ms-PL」とも呼ばれる)は、MicrosoftのShared Sourceライセンスの中でも最も制約が少ないとされており、個人が「商用あるいは非商用目的でソースコードを閲覧・修正・再配布する」ことが認められている。

 Microsoftで「Dynamics/SL」(旧名称はMicrosoft Solomon)製品ラインを担当するグループマネジャー、デビッド・デニス氏は、「MBSは社内で先頭に立って、これらのライセンスを活用する取り組みを進めてきた」と話す。

 GotDotNetのSandboxでは、ほかのMBSプロジェクトも進められている。

 Microsoftは2005年12月、Dynamics 3.0と同社のオンラインマッピングサービス「MapPoint」を組み合わせたマッシュアップをGotDotNetに登録した。このようなマッシュアップを利用すれば、Dynamics CRMの連絡先フォームをカスタマイズして、MapPointの地図に連絡先の住所を表示させるといったことも可能になる。

 また2005年11月には、MBSは「Dynamics/SL Business Portal Lite」をGotDotNetからダウンロードできるようにした。Business Portal Liteは、MBS Business PortalとDynamics/SL ERPシステムを接続するシンクライアント型インタフェースとして各種のブラウザ(Internet Explorer、Safari、Firefox、Mozillaなど)を使用することを可能にする。このポータルでは、経費承認、アラート、プロジェクトの利益率追跡/評価などの機能をユーザーに提供している。

 デニス氏によると、MicrosoftがこれらのGotDotNetプロジェクトを立ち上げて以来、「驚くようなペースで利用が拡大している」という。会員専用のCRM Sandboxでコードや情報を見るために750人以上の個人ユーザーが登録した。また、Dynamics/SL Sandboxには110人以上が登録したという。

 MicrosoftでDynamicsのマーケティングを担当するゼネラルマネジャー、ジェームズ・ウッツシュナイダー氏は、「われわれが最近、特に宣伝しているのがWebサービスと社内アプリケーションをマッシュアップするというアプローチだ」と話す。

 ウッツシュナイダー氏によると、Microsoftでは、こういった組み合わせによってCRM/ERPアプリケーションを拡張し、これらを同社の包括的な「Live」戦略の一部にする可能性が高いという。「Windows LiveがWindowsに対する拡張サービスセットであり、Office LiveがOfficeの拡張サービスセットであるのと同様、当社はMBSアプリケーション群に対しても同じ方式を採用するつもりだ」と同氏は話す

 「RSSフィードやアラート、MapPoint、各種のモバイル拡張機能などでユーザーインタフェースをカスタマイズできるようにすることが重要なポイントだ。ロール(役割)ベースの複合型アプリケーションは、ビジネスアプリケーションにとってのWeb 2.0のようなものだ」(ウッツシュナイダー氏)

 しかしMicrosoftでは、すべてのMBSマッシュアップおよびLive拡張機能を同社が提供する考えではなさそうだ。デニス氏によると、MicrosoftのERPソフトウェアであるNavisionの場合、同社のパートナーの多くは、公共ニュースグループやパートナーニュースグループを通じてコードを共有することに慣れているという。

 「われわれが現在進めている取り組みは、当社のパートナーがこれまでずっと取り組んできたことの自然な延長だ」とデニス氏は説明する。

 Microsoftによると、3月半ばにダラスで開催されるMBSユーザー/パートナー向け「Microsoft Convergence」カンファレンスで、同社のMBS Live/マッシュアップ戦略を説明する予定だという。

Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.

注目のテーマ