熱戦の裏で……ワールドカップを支えるITインフラはこうなる(2/2 ページ)

» 2006年03月14日 13時18分 公開
[高橋睦美,ITmedia]
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高いサービスレベルへの要求

 ジェファーソン氏によると、2002年の日韓ワールドカップのときに比べ、一連のインフラには幾つか違いがある。規模がより大きくなっただけでなく、完全にデータと音声を統合した「インテリジェントなコミュニケーションインフラ」として設計した。また、ADパス発行をはじめとする主要なアプリケーションも、クライアント/サーバ型ではなく「Webベースで提供する」(同氏)

 無線インフラも当たり前だ。「2002年の大会では、カメラマンはまだ暗室で写真を現像していた。しかし今回は、ピッチ上で撮影された画像が、ワイヤレスでリアルタイムに送信されることになる」(同氏)。さらに、コンフェデレーションズカップで試験的に導入されたチケットのRFIDタグも全面的に採用され、「人々がより迅速に入場できるようになる」という。

 アプリケーションについても、より高いサービスレベルが求められる。例えばADパス発行システムでは約20万枚ものパスが発行される見込みだが、「前回は1週間前に申し込みを行う必要があった。しかしシステムをWebベース化することで、数時間前まで対応できるようになる」(ジェファーソン氏)

 しかも「発行処理に10分や15分も待たされるようではだめ。すべての処理が高速に行われることが求められる」(同氏)。音声通話にしても試合結果を示すデータシステムについても、滞りなく迅速に処理してほしいというハードルが高まっているという。

 そこで重要になるのが、アプリケーションごとのQoSや優先順位付けだ。同社によると、今回のネットワークインフラは、Avayaのほか、Extreme Networksの「BlackDiamond」をはじめ、10以上の異なるベンダーが提供するネットワーク機器やソフトウェアを組み合わせたヘテロジニアスな環境だ。「その中で相互運用性を確保しつつ、包括的にポリシーを適用することが重要」だという。

 また、信頼性も非常に重要な要素だ。「例えば試合結果を伝えるシステムに障害が起これば、世界中の人々がそれに気付いてしまう」(ジェファーソン氏)

 そこで、統合ネットワーク分析ツールに加え、自己診断機能などをネットワークに組み入れることで、マルチベンダー環境でも24時間体制で障害の検出や切り分けを行えるようにしていく。例えば音声通話にパフォーマンスの劣化などが生じた場合は、リアルタイムにそのことを検出し、障害が深刻化する前に対応する仕組みだ。「アプリケーションレベルでパフォーマンスを可視化し、レスポンスの劣化や遅延、回線仕様率などを常に把握し、閾値を超えたら対応していく」(同氏)

 セキュリティについても、同様の監視の仕組みを組み入れていく。ジェファーソン氏は「現時点では、セキュリティについて詳細は明らかにできない」というが、ファイアウォールやIDSなどの機器はもちろん、「DoS攻撃への対処はもちろん、音声トラフィックの暗号化やセキュアなIMといったさまざまなレベルのセキュリティを、インフラにビルトインされた形で提供していく。しかも、Avayaだけでなく、ExtremeやJuniperなどの協力を得て、包括的なセキュリティポリシーを展開していく」と述べた。

 「Avayaの持つアプリケーションやテクノロジ、パートナーシップのショーケースという意味で、FIFAワールドカップ以上に大きなステージはない」とジェファーソン氏。これまで同社が企業向けに培ってきたベストプラクティスを適用することで、3カ月後に控えるワールドカップを支えていきたいとした。

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