中堅企業の「情報導線」をコントロールする強い中堅企業のIT化シナリオ(2/3 ページ)

» 2006年03月16日 08時37分 公開
[鍋野敬一郎,ITmedia]

情報導線を集約してIT統制環境を整備する

 大手企業はIT化の領域の幅が広く、ERPや連携システムに業務を最適化する形で、比較的容易にシステムを載せ代えることができる。もちろん、部門間の情報利用目的の違いと政治的な問題が絡むものの、システム面での障壁は低いのである。

 一方で、中堅企業では既存のIT化領域が狭いため、現状紙で受け渡している情報をいかにITで取り込むかということが最大の課題になる。それはITそのものの話なのである。だが、中堅企業では、ERPの導入においても、過去に作りこんだ既存システムとの比較論に終始してしまい、本質であるITを利用する環境や業務プロセスのあるべき姿にまで話が進展しないことが多い。

 これはベンダー側の姿勢にも問題がある。ERPを提案するベンダーの大半が、これまで顧客の都合でシステムを開発してきており、機能の有無やデータの処理にシステムイメージが偏ってしまっている。原因は、ベンダーが顧客の業務プロセスを鳥瞰できていないために、全体像を把握していないことに原因がある。

 わたしはもともと、化学メーカーの事業部門で営業やマーケティングに従事してきた経験があるため、ある程度業務プロセスを意識してシステムの全体像をイメージすることができる。管理部門である情報システム部門や、業務単位のシステムを開発してきたベンダーにとって、このような全社レベルの業務プロセスを意識したシステム開発というのはなかなか慣れないようだ。そして、ここでポイントとなるのが情報導線である。

 業務プロセスをイメージする情報導線の考え方は、中堅企業のIT化にとって最も重要なポイントになる。これは、内部統制という企業全体を網羅すべきテーマに対処するために有効な発想だ。

シナリオ:IT統制環境を情報導線管理で実現する

 さて、中堅企業における情報導線を意識したIT化シナリオを考えて見よう。まず「情報導線」のイメージをつかみやすくするために、家のリフォームの考え方をシステムになぞらえて考えてみる。

  • 1.水まわり → 情報導線
  • 2.間取り → 基盤・インフラ
  • 3.設備・内装 → 機能・サービス

 最終的に実現しなければならないのは、「3.設備・内装→機能・サービス」なのだが、これを網羅するためにはシステム化、電子化していない紙ベースの部分、つまり「1.水廻り→情報導線」を必ずシステムに取り込むことだ。

 これは日常業務で使用する紙のフォームを電子入力フォームに変えて実現する。コツはユーザーのニーズに合わせて迅速かつ幅広いバリエーションに対応できるようにすることだ。パッケージありきで固めるのではなく、現状を踏まえた柔軟な入力作業をサポートする手段を選択する必要がある。

 次に、これらのデータを次の業務処理につなぐハブシステムを介して制御する。つまり、内部統制にシステム的に対応することを前提に、データ入力者にひも付くログやタイムスタンプ、権限やセキュリティをここでチェックする。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ