Vistaの5エディション形態は誰に恩恵をもたらすか？（2/3 ページ）

[Michael Cherry，Directions on Microsoft]

Windows Vista Home Premium
　Windows Vista Home BasicとWindows Aeroのすべての機能に加え、Windows XPのTablet PCおよびMedia Centerエディションでのみ提供されてきた機能を搭載する。Media CenterインタフェースやWindows Movie Makerなど、デジタルエンターテインメント用のアプリケーションがアップデートされ、DVDの作成と焼き付けや高精細ビデオコンテンツの操作など、新しいデジタルメディア機能が追加される。Windows Home Basicと同様に、Windows Home PremiumはWindowsドメインへの参加機能など、企業で必要な機能を搭載しない。

Windows Vista Ultimate
　Windows Vistaのすべての機能を求める消費者向けに提供される。特にターゲットとしているのは、家と職場の両方でハイエンドノートPCを使う消費者だ。Microsoftは、Windows Vista Ultimateは消費者向けエディションであり、ボリュームライセンスの対象にはなじまないとしている。だが、このエディションはWindows Vista Enterpriseの完全なスーパーセットであり、SAやEAを購入していない企業でも、このエディションを購入すれば、MUIやBitLocker Drive Encryptionなどの機能を入手できる。

　これら3つのエディションは、いずれも32ビットおよびx64 64ビットプロセッサ用のインストールオプションを提供する。

特殊なエディション

　Microsoftは消費者および企業向けの主要エディションに加えて、Windows Vista Starter Editionも提供する。これは32ビットプロセッサに対応した安価なエディションであり、発展途上国での利用が想定されている。前バージョンにあたるWindows XP Starter Editionと同様に、Windows Vista Starter Editionはインターネット対応PCの基本的な要件を満たすが、ローエンドハードウェアとダイヤルアップ接続環境向けに設計され、9つの言語で33カ国に提供される。

　また、Microsoftは欧州連合（EU）市場向けにWindows Vistaの「N」エディションも提供する。EUの独禁当局からの法的命令に従ってMicrosoftが提供しているWindows XP HomeおよびProfessionalの「N」エディションは、Windows Media Playerとその関連技術を搭載していない。MicrosoftはEUと協議し、Windows Vistaのどのエディションについて「N」エディションを（32ビットおよび64ビットプロセッサ用のインストールオプションとともに）提供するかを決定する。

ライセンスコストが上昇、OEMに難題

　MicrosoftはWindows Vistaの価格を発表していないが、企業が同OSの展開機能やデータ保護機能をすべて求める場合には、ライセンスコストの上昇に直面することになるだろう。MUI機能は新しいものではない（この機能はWindows 2000で導入された）が、Windows Vistaを中央から一括して展開したいと考える多国籍企業にとって有益だ。また、BitLocker Drive Encryption機能は、紛失や盗難の恐れがあるノートPC上のデータを保護する上で重要だ。Microsoftは明らかに、企業がWindows Vista Enterpriseのこれらの機能を手に入れるために、WindowsクライアントのSAやEAを購入することを期待している。現在、WindowsクライアントのSAやEAを購入する企業は比較的少なく、そうした企業の割合は2005年後半に減少したと、同社は財務報告で述べている。

　MicrosoftがWindows Vistaで多くのエディションを用意するもう1つの理由は、Windowsクライアントのエディション間でアップグレードが行われる機会を増やすためだ。これまで、Windowsクライアントでは一般に、そうした機会はほとんどなかった（Windows XPの場合、こうしたアップグレードに関しては、Windows XP HomeからWindows XP Professionalへという選択肢しかない）。低価格なエントリーレベルのエディションの機能を減らすことで、Microsoftは顧客の初期コストを抑え（現在のWindowsのコストを超えないようにこうしたエディションの価格を設定する可能性が高い）、消費者のアップグレードを促進して売り上げ増につなげることができる。Windows Vista Home Basicの顧客は、Home Premium、Business、Ultimateといった選択肢の間でアップグレードを2〜3回行うかもしれない。