Vistaの5エディション形態は誰に恩恵をもたらすか?(3/3 ページ)

» 2006年03月30日 07時00分 公開
[Michael Cherry,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版
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 そうしたアップグレードを容易にするため、Windows Vistaの消費者および企業向けの各エディションは、新しいAnytime Upgrade機能をサポートする。これらの各エディションは、上位エディションの内容をすべて含み、顧客は新しいプロダクトキーを購入するだけで、上位機能のロックを解除できる。Microsoftは、そうした取引によってかなりの売り上げを確保するだろうが、そうした取引のほとんどは、OEMや小売業者を通さずにオンラインで行われるだろう(Microsoftは小売業者を通じてアップグレードライセンスを提供するかもしれないが、ほとんどの顧客は、Anytime Upgradeの画面でボタンをクリックし、新しいライセンスやアクティベーションキーを購入してダウンロードする方が簡単だと思うだろう)。

 こうした新しいパッケージ構成は、OEMにいくつかの問題をもたらす。現在、OEMは売り上げベースでWindowsクライアント販売の80%以上を担っており、この割合は、WindowsクライアントのSAやEAの売り上げ減少とともに着実に上昇している。短期的には、Windows Vistaの多様なラインナップが消費者を混乱させ、OEMはこのマーケティング上の難題の解決を迫られる可能性がある。Anytime Upgradeによって顧客はより機能豊富なエディションにアップグレードできるものの、そうした機能を有効に活用できるかどうかはハードウェアによって決まる。例えば、Windows Aeroは強力なグラフィックスハードウェア機能を要求する。顧客が不適切なハードウェア構成のマシンを買い、後でアップグレードした際に不都合が生じたら、OEMがやり玉に挙がるかもしれない。また、長期的には、MicrosoftがSA/EAの販売拡大に成功し、OEMを通じたWindowsクライアント売り上げの割合が減少すれば、MicrosoftのビジネスはPCの売れ行きに左右されにくくなり、Windowsクライアント事業の全体的な戦略に対するOEMの影響は低下するかもしれない。

 しかし、Windows Vistaの多様なラインナップは、OEMにとって悪いことずくめではない。新しいパッケージ構成では、Windows Vista Home PremiumおよびUltimateという高価な消費者向けエディションが新たに用意されており、OEMはこれらを利用して、強力なPCハードウェアの販売と、PC 1台当たりの売り上げ増を図ることができる。これはMicrosoftの売り上げ増にもつながる。また、Ultimateは、企業向けのPC 1台当たり売り上げも押し上げる可能性がある。企業はSAやEAの代わりにこの高価なエディションを購入して、BitLocker Drive EncryptionなどWindows Vista Enterpriseの機能を入手しようとするかもしれない。

 一方、Windows Vistaで多くのエディションが提供されることで、ISVにとってはソフトウェアテストが複雑になる可能性がある。ISVはテスト対象を広げ、32ビットおよび64ビットプラットフォーム上でのすべての消費者および企業向けエディションをカバーしなければならないかもしれない。企業開発者も、32ビットおよび64ビットプラットフォーム上でWindows Vistaの企業向けエディションとUltimateを対象に、アプリケーションをテストしなければならないかもしれない。

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