個人サイトから「大企業」へ成長した価格コムの変遷(1/2 ページ)

2003年10月に東証マザーズに上場、2005年3月には早くも東証一部上場を果たしたネット企業として知られているのがカカクコムである。同社の成長の要因を考える。

» 2006年03月31日 17時13分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 2003年10月に東証マザーズに上場、2005年3月には早くも東証一部上場を果たしたネット企業として知られているのがカカクコムである。コンシューマ向けにネット購買サービスを展開する企業の中では、アマゾンジャパンなどと並んで代表的なサイトの1つといえる。

 簡単に言えば「ある商品を最も低価格で販売している店舗から順にランキング形式で教えてくれるサイト」だ。もともと、PCやデジタル家電を中心にしていたジャンルも、現在は一般家電、自動車、ペット、宿泊などへ広がっており、さらに、金融商品や旅行業への進出も実現している。

 1月時点の月間利用者は778万人、月間総ページビューは3億4200万、登録商品数は20万点、参加事業者数は989社となっている。また、利用者数に占めるPC関連や家電、カメラ、自動車関連のユーザー比率は年を追うごとに減少し(2005年9月に19.4%、前年は23.8%)、変わって、ゲーム、金融、ペット、DVDなど、比率の小さい事業が多数集まって売り上げを構成する傾向が出てきている。

 同社も、初めは個人サイトの形で小さな一歩を踏み出している。その後、ビジネスモデルの優位性を武器に中堅から一部上場企業へと順調な道のりを歩んでいる。同社の取り組みについて、CTO(Chief Technology Officer)を務める安田幹広氏に話を聞いた。

「IT製品を買う場合は期末を狙うのがお得」と話す安田氏

ユーザー視点で提供する2つの強み

 カカクコム成長の要因について、「とにかくユーザーの視点に立った」と話す安田氏。具体的には、良いものをなるべく安く買いたいユーザー向けに、会員企業を介して魅力的な価格を提供できる点が大きい。

 また、インターネット時代のマーケティングにおいて、口コミ情報の重要性を証明したのも同社だ。メーカーごとの製品イメージではなく、個別の製品についてピンポイントに焦点を当て、それを実際に利用しているユーザーの声をダイレクトに拾うことができるような情報源は、ほかにはなかなか見当たらない。

 実際に、ユーザーの視点に立って同サイトの製品情報を見るとそれが分かる。例えば、ある機種のエアコンの購入を考えているユーザーは、その製品を実際に使っているユーザーの複数の書き込みを読んでいるうちに、使い勝手についてかなり膨大な生の情報を得ることができる。

 あるエアコンについて、「(冷房が)とにかくよく冷える」「暖房の性能がいまひとつ」といった一般的な情報を取得できる。さらには、「冷暖房が稼働中、右上のボタンがずっと点灯しているため夜中にまぶしくて眠れない」といった、買った人しか気付かないようなポイントも指摘されている。

 ちなみに上記は筆者の経験であるため、続きのエピソードをお伝えすると、同サイトでこのエアコンのことを調べてから、大手家電量販店の店員に説明を受けた。すると、製品の基本部分から細部に至るまで、自分の方が明らかに商品知識では上であることに気付いた。店員の説明はカタログに書かれているレベルにとどまっており、ライブ感に欠けている。実際に使っている人から情報を仕入れているのだから当たり前なのかもしれない。これには感心すると同時に、インターネット時代のマーケティングの方法論が必ずしも、現状の延長線上にはないことを感じた。

Verity導入で新たな成長を目指す

 同社の情報システムへの取り組みの基本的なコンセプトは、「底値買い」にあると安田氏は話す。システム投資については非常に慎重で、「なるべくコストを掛けずにシステム拡張している」という。ソフトウェアについても、オープンソースを最大限に活用しているという。

 そんな同社が最近導入したのが、ユーザーによる商品検索、口コミ掲示板におけるサイト内検索エンジンである。採用したのは米Verityが提供する「Verity K2 Enterprise」。日産自動車が全社的な知識共有プラットフォームとして採用していることでも知られている。

 安田氏はVerityの検索エンジンを採用した理由について「パラメトリック検索に対応していたのがVerityだけだった」と話す。パラメトリックとは、母集団の特性を規定する母数について仮説を立てる手法だ。これにより、より正確な検索環境をユーザーに提供できるようになった。

 同社にとってビジネスの基盤である検索エンジンを刷新したことで、収益モデルをより安定したものへと改善させることができたとしている。

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