ハイブリッド対応でストレージ市場に攻勢をかけるサーバOS

String Bean SoftwareからWinTargetのテクノロジーを買収したことで、SANとNASの両技術に対応するハイブリッドWindowsストレージデバイス実現への道が開かれた。ストレージ市場でのシェア拡大につなげることができるか?

» 2006年04月07日 00時00分 公開
[Peter Pawlak,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 現行のWindows Storage Server 2003 R2はネットワーク接続ストレージ(NAS)デバイス向けに特化されたOSだが、String Bean Softwareから最近買収したテクノロジーを組み込むことで、次期バージョンではストレージエリアネットワーク(SAN)デバイスOSとしての利用が可能になる見込みだ。WinTargetと呼ばれるこのテクノロジーは、ファイル共有プロトコルではなくSANを利用してWindows Storage Server 2003ベースのストレージに他のサーバが接続できるようにするものだ。ファイル共有プロトコルを使用したネットワークストレージアクセスでは、正常に機能しないかまったく機能しないアプリケーションは多い。Windows Storage Server 2003アプライアンスでは、これが足かせとなって一部顧客のデータストレージ要件を完全に満たすことができずに採用が見送られた場合があることを考えると、SANアクセスが実現される意義は大きい。

WinTargetとは

 SANは、ブロックレベルでのディスクデータ転送用のネットワークプロトコルを使用して、サーバが外部の共有ディスクストレージアレイにアクセスできるようにする技術だ。WindowsサーバおよびUnixまたはLinuxサーバの場合は、このデータ転送プロトコルにFibre ChannelまたはiSCSI(Internet Small Computer System Interface)を使用する。従来、SANのストレージデバイスにはWindowsやLinuxなどの汎用OSは利用されず、ブロックレベルでのディスクデータの読み取りおよび書き込み操作用に最適化されたハードウェア固有の小型OSが搭載されている。

 現在ほとんどのSANは、SANプロトコルとして実績のあるFibre Channelプロトコルを採用している。ただしFibre Channelと異なり、iSCSIトラフィックは特殊なスイッチやルーターを必要としないため、ローカルでもリモートでもストレージアクセスプロトコルとしてのiSCSIプロトコルの利便性は高い。iSCSIプロトコルを利用する場合、サーバはiSCSIイニシエータソフトウェアを使用して、ディスクI/Oコマンドを発行し、このコマンドは、TCP/IPネットワークを介してiSCSIターゲットソフトウェアを実行するデバイスに送られる。

 Windows Server 2003には既にiSCSIイニシエータソフトウェアが搭載されており、ターゲットソフトウェアを備えるiSCSIストレージアレイへの接続が可能だ。ただしString BeanのWinTargetは、Windows OS用のiSCSIターゲットソフトウェア製品であるため、これを組み込めばWindowsコンピュータをiSCSIストレージアレイとして利用できるようになり、SAN上の他のサーバにブロックレベルでのストレージアクセスを提供できる。

 Microsoftは、2006年第2四半期にリリースを予定しているWindows Storage Server 2003 R2の新版に、このWinTargetテクノロジーを実装する予定だ。Windows Storage ServerはWindows Server 2003のNASデバイス専用バージョンで、高い拡張性および可用性を備え、バックアップやディスク領域の再編成などの管理作業を簡素化する機能が追加されたファイルサーバである。Windows Storage Serverは、OEMによりインストールおよび設定が済んだNASアプライアンス搭載OSとしてのみ提供される。Windows Storage Server搭載アプライアンスを提供するOEMには、Dell、EMC、Hewlett-Packard、IBMといった大手メーカーが名を連ねている。

 String BeanはWindows Server 2003およびWindows XP用のWinTargetを提供していたが、MicrosoftではこれらのOS対応のWinTargetを提供する計画はない。

SAN/NAS対応ハイブリッドデバイスの必要性

 NASサーバは、SMB(Server Message Block)やNFS(Network File System)などのネットワークファイル共有プロトコルを使用して、他のサーバやワークステーションにディスクストレージプールへのネットワークアクセスを提供する。このとき、他のサーバやワークステーションが、NASサーバに直接接続しているか(DAS:直接接続されたストレージ)、SAN経由でNASサーバに接続しているかは問わない。しかしNASでは、主にデータベース管理システムなど、ファイルレベルではなく、ブロックレベルでデータの読み書き込みを行うように開発および最適化されているアプリケーションが適切に機能できない。このため、例えばMicrosoftは、NASベースのストレージとSQL Serverとの使用を推奨しておらず、特定の要件を満たしたNASハードウェアでしかSQL Serverをサポートしない予定だ。ただしこれらの要件を満たしている場合でも、データベースのパフォーマンスが大幅に低下することを示す免責条項が付く。同様にExchange 2003でのNASの使用も、特定の条件下でしかサポートされず、SANやDASストレージを使用する場合に比べてパフォーマンスは劣る見込みだ。

 Microsoftは、WindowsベースのアプライアンスがiSCSIプロトコルに完全に対応し、アプリケーションサーバーへのブロックレベルのストレージアクセスを実現できれば、より多くの顧客にWindows Storage Serverシステムの導入を訴求できるとしている。WinTargetテクノロジーがWindows Storage Server 2003 R2に組み込まれることで、OEMはファイルレベルとブロックレベルの両方のTCP/IPネットワークを介したストレージアクセスをサポートするハイブリッドデバイスを提供できるようになる。ただしMicrosoftは、Windows Storage Serverアプライアンスでは、Windows OSと汎用サーバハードウェアのオーバーヘッドのために、専用の(高価で複雑な)iSCSI SANストレージアレイほど高速なディスクI/Oパフォーマンスは得られない点に注意を促している。

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