Vistaリリースを正常化させる、たった一人のリーダーとは?(2/2 ページ)

» 2006年04月11日 07時00分 公開
[Rob Helm,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版
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Poole氏は、最初はデジタルメディア部門の責任者として、その後はWindowsクライアント部門の責任者として、デジタル写真、オーディオ、ビデオなどを介したコンシューマー向けのWindows販売の拡大に取り組んできた。だが、同氏の在任中には、Appleがデジタルメディア分野で圧倒的なリードを確立し、NPD Techworldによれば、Appleは2005年11月、携帯音楽プレーヤー市場と合法な音楽ダウンロードサービス市場の両方で70%のシェアを達成している。2005年9月の組織再編以降、Microsoftはコンシューマー戦略の責任の多くをエンターテインメント&デバイス部門担当社長のRobbie Bach氏に移行している。

 今後Poole氏は新設されたマーケット拡張グループの責任者として、新製品(Windows XP Starter Editionなど)、不正コピー対策、低コストデバイスなどを介して、新興成長市場向けのWindowsの販売方法の開拓に当たる。

Windowsコア部門は依然Vistaにフォーカス

Brian Valentine氏
 Windowsコアコンポーネント(カーネルも含む)とネットワークエレメントの開発を担当するWindowsコアオペレーティングシステム部門担当上級副社長のValentine氏は、今後もAllchin氏とJohnson氏の直属となる。Valentine氏は主に、2006年11月に予定されているボリュームライセンス顧客向けのリリースに間に合うようWindows Vistaを安定化させるという難しいタスクを監督することになる。

Ben Fathi氏
 Fathi氏はMike Nash氏の後任として、セキュリティ技術部門の責任者に任命された。同部門はWindowsのコアセキュリティ技術(アクセスコントロール技術など)のほか、セキュリティの脆弱性に対応するためのセキュリティ対応センターを統括する。Fathi氏はこれまでコアファイルサービス担当ジェネラルマネジャーとして、Windowsファイルシステム、リモートファイル共有プロトコル、ストレージサービスなどを統括していた。同氏もNash氏と同様、Valentine氏の直属となる。Nash氏はサバティカル休暇の後、新たな職務に復帰する計画だ。

Windows部門の文化や規範を変えられるか?

 今回の組織再編では重要なポジションが空いたままとなっているため、これから1年の間にさらに組織変更が実施されることになるだろう。一番重要なのは、Office事業の統括というSinofsky氏のこれまでの職務の後任を決めることだ。Office事業には、クライアントアプリケーション(主にOfficeパッケージ)とサーバ製品(Project ServerやSharePoint Serverなど)の両方が含まれるが、これらの製品はすべて2006年遅くにメジャーリリースが予定されている。またMicrosoftはMSN販売/マーケティング担当副社長David Cole氏の後任を急いで探すか、あるいは同部門を新しいマネジャーの下で再編する必要がある。

 長期的には、Sinofsky氏にとって最大の課題は、緩慢で予測のつかないWindowsのリリースペースの解消となるだろう。この問題は最近始まったものではないが、徐々に差し迫った問題となっている。新技術の採用という点でAppleのOS Xなどの競合OSに先を越され、競合OSに対抗する上で戦略上重要となるはずのMicrosoftのそのほかの新技術(.NET Framework、Internet Explorerブラウザ、デスクトップ検索クライアントなど)も、Windowsのリリースに合わせて市場に投入されないままになってしまっているからだ。Microsoftの3つの主要なビジネスセグメントの1つであるWindowsクライアント部門も、収益性の高い長期契約でのライセンス購入を顧客に促すという点ではあまり成功していない。これは一部には、Windowsリリースの緩慢なペースがそうした長期契約の魅力を薄めていることによるものだ。

 Sinofsky氏は既に、Office製品を定期的にリリースできる手腕を証明済みだ。だが、同氏がWindows部門の文化と戦略上の規範を変えられるかどうかは、それほど定かではない。長期の製品開発サイクルの最後の段階に入ってから、大変革を行う権限とともにWindows部門に参加したマネジャーは、同氏が初めてではない。現在、コアオペレーティングシステム部門の責任者を務めているBrian Valentine氏も、リリース延期に悩まされていたWindows 2000の開発プロセスの最終段階になってWindows部門に加わったが、結局、Windows VistaもWindows 2000と同様、長くて困難な開発プロセスをたどることになった。Windows部門が.NET FrameworkやSQL Serverベースのデータベースエンジンなどの技術をWindows Vistaに統合しようとした結果だ。

 Office事業の統括に際しては、Sinofsky氏は出荷日を守るためにMicrosoftの主要技術の採用を見送ることができた。そうした主要技術の配布手段として戦略上はるかに重要となるWindowsの開発を統括するに当たっては、Sinofsky氏の自由度は制限されることになるかもしれない。Sinofsky氏が成功するためには、同氏には、何千人というWindows開発者から同社のチーフソフトウェアアーキテクトBill Gates氏に至るすべての人たちのサポートが必要となるだろう。そして、Gates氏も「統合された革新(Integrated Innovation)」という同社のコンセプトの追求よりも、さらに優先する必要があるかもしれない。

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