エンスリン氏は今年1月に行った記者会見で、SAPジャパンの2010年までの中長期的目標として次の四つを掲げた。
@大規模な自社開発システムに代わる「業界標準」の業務アプリケーションのリーディングベンダーへ。
Aパッケージソフトの活用度が比較的低い金融、公共、小売の3業種における、最大のソフトライセンス提供ベンダーへ。
B中堅企業向けに、業界をリードする付加価値の高いパートナービジネスを日本で確立し、すべての業種・地域に対してビジネス範囲を拡大、パートナーとともに成長する。
C標準的なESAプラットフォームとしてSAP BPP(ビジネス・プロセス・プラットフォーム)を確立するとともにISV(独立系ソフトベンダー)コミュニティを立ち上げ、広範囲の業種・業務に対して付加価値の高いソリューションを提供する。
そのうえで同氏は、2010年までにビジネス規模を現在の2倍に、また顧客数を4倍以上にすることを宣言した。この意欲的な目標の根拠はどこにあるのか。また、冒頭で同氏が最大のビジネスチャンスとして挙げたコンプライアンスへの対応で、ユーザー企業が留意すべき点は何か。そして同氏の経営哲学についても語ってもらった。
アイティセレクト 意欲的な目標の根拠はどこにあるのですか。
エンスリン ビジネス規模を2倍にするためには、新しい市場を開拓していかなくてはなりません。その礎となるのがBPPです。今後SAPは2010年までに、ERPを中心とした既存のソリューションと、BPPに対応したアプリケーションからなるソリューションの割合を半々にしていくつもりです。BPPを確立することによって、ビジネスパートナーとの対応アプリケーションの協業も一層進展すると思います。SAPでは現在の業務プリケーションの市場規模をおよそ300億ドルとみていますが、2010年にはこれが700億ドル規模に拡大すると予測しています。したがってビジネス規模を2倍にするという目標も、そうした市場の拡大を想定して掲げています。
アイティセレクト コンプライアンスへの対応で、ユーザー企業が留意すべき点をお聞かせください。
エンスリン キーワードは「プロアクティブ・マネジメント」。つまり、積極的に迅速に取り組むことが肝要です。コンプライアンスに関して何か問題が起こっているのに、それがあとになってから発覚するようでは、企業にとって最悪の事態を招きかねません。そうならないように先手を打たなければいけないのが、コンプライアンス対応の勘所だと思います。
その点、SAPは長年にわたって経験とノウハウを蓄積しており、監査情報管理システムや経営情報管理システムをはじめとして、コンプライアンスに関連する広範囲できめ細かいソリューションを提供しています。とくにこの分野では今、SOX法への対応が注目されており、日本でも日本版SOX法がまもなく施行されるとあって、対応ソリューションのニーズが高まっています。SAPはまさにそうしたニーズにお応えできます。こうしたコンプライアンス対応でも、私たちはお客様に最も信頼される会社であり続けたいと思っています。
アイティセレクト 最後に、ご自身の経営哲学についてお聞かせください。
エンスリン まず第一に、コミットしたら必ず結果を出すこと。第二に、透明性を持つこと。第三に、率直であること。第四に、情熱を持つこと。第五に、楽しむこと。ですから、私は毎朝、出社するのを楽しみにしていますよ。
このインタビューは現在発売中のアイティセレクト6月号に掲載されています。
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