FOSSへの道を歩むXara(1/3 ページ)

ソフトウェアベンダーがフリー/オープンソースソフトウェアのビジネスモデルに転向するのは難しい、というのが世間一般の考え方である。しかし世の中にはそうした常識を覆そうと挑戦する企業が存在する。

» 2006年05月11日 15時45分 公開
[Bruce-Byfield,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 ソフトウェア開発会社がフリーソフトウェアおよびオープンソースソフトウェア(FOSS)のビジネスモデルに転向するのは難しい、というのが世間一般の考え方である。だが、Xaraの楽観的なCEO、チャールズ・モール氏には、この考え方が通用しなかったようだ。

 Adobe Illustrator、Macromedia FreeHand、Corel Drawのような大手製品に対抗できるグラフィックエディタ、Xara Xtremeで知られるXaraは、フラッグシップ製品をGNU/Linuxに移植する意向を2005年後半に発表していた。

 同社は先月、Xara Xtreme on Linux(Xara LX)の第一弾となるコードをリリースした。以来、Xara LXのコードには毎日のように追加が行われている。この移植は、Xaraにとって大きな賭けである――モール氏は、文字どおり社運を賭け、FOSS標準への適合と、新しい市場を開拓する機会の獲得に臨むべく、対外的にも社内的にも方針の変更を行ったのだ。

戦略的な移行

 Xara LXをFOSSとしてリリースした動機は戦略的なものだ、とモール氏は率直に認めている。Xara Xtremeは、売り上げは好調ながら、「いつも大手には及ばず、3位か4位の座に甘んじている」とモール氏は話す。大手と張り合うには、レビューや口コミ、そして価格で勝負するくらいしか方法がなかった。例えば、Xara Xtremeの価格は、現在、同社のホームページで79ドルになっている。これに対し、Adobe Illustratorは499ドル、MacroMedia FreeHandは399ドルだ。「彼らがマーケティングや開発にどれだけ予算を取っているかは知らないがね」とモール氏は語っている。

 モール氏は、Corel LinuxやCorel Officeのように、かつてGNU/Linux市場への参入に失敗した製品のことを意識していた。だが、今やマーケットはもっと成熟している、と彼は信じている。さらに、IllustratorやFreeHand――今ではどちらもAdobeの製品だが ――それにCorelが、GNU/Linux市場への参入を躊躇している今こそ、Xara LXによってXaraが先手を打つ好機だと考えているのだ。彼は、GNU/Linux市場について「これからまだまだ成長が期待できる」と話している。「小さな市場ではない。数字を信じるなら、LinuxデスクトップにはMacデスクトップと同じくらいのユーザーがいる。数百万人規模だ。ということは、われわれにとって相当大きな市場なのだ」

 同時に、モール氏は、グラフィックプログラムをクロスプラットフォームにすることで、リスク分散の効果もあるだろう、と語っている。10年前、Xara Xtremeをはじめて開発したころは、Appleが不調だったので、Windows向けにリリースを行うのが当然だったが、「正直なところ、その選択は間違いだったようだ」とモール氏は言う。この間違いを繰り返さないという決意だけでなく、ここ数年、AdobeがOS X向けの取り組み意欲をなくしているという噂もあって、クロスプラットフォーム化は、Xaraが競合他社を出し抜くもう1つの方法なのかもしれない。

 また、社内的には、Xara LXの開発は、既にOS Xへの移植に役立っている。最終的には、3つのプラットフォームのすべてのバージョンで、多くのコードが共有されることになるということだ。

 確かに、グラフィック分野のプロフェッショナルで仕事にGNU/Linuxを使っている人は少ないかもしれない。しかし、この問題を認めながらも、モール氏は、クロスプラットフォーム化を市場開拓のよい機会ととらえている。また彼は、プロフェッショナルだけでなく、仕事でたまにグラフィックツールを必要とする人々やホームユーザーにもXara LXを訴求していく必要があるとはずだ、と語った。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © 2010 OSDN Corporation, All Rights Reserved.

注目のテーマ