FOSSへの道を歩むXara(3/3 ページ)

» 2006年05月11日 15時45分 公開
[Bruce-Byfield,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine
前のページへ 1|2|3       

成否の判断基準

 それでも一部のFOSSコミュニティーに対しては、Xaraの実力をまだまだ示さねばならないこともモール氏は承知している。2005年の秋にXaraがはじめてFOSSへの取り組みを発表したとき、多くの人々は、懐疑的な態度を取り、Windows中心の企業が口先だけの宣伝をしているのだろうと真剣に取り合わなかった。Xara LXの最初のコードが公開された今、モール氏は、懐疑論者たちが間違っていたことを証明してみせ、面目を保ったわけだ。しかし、最終的に彼は、この賭けをどのように評価するつもりだろうか。

 わずか1%のユーザーが、独占的コードによる機能強化版を購入してくれれば、Xara LXは採算が取れるはずだ、とモール氏は語る。同時に、収益だけが成功の基準ではないことも明らかにしている。「おそらくわれわれはXara LXをLinuxに移植するのに20万ドル以上を費やしているが、このビジネスゲームにかけた費用はそれですべてだ。だからといって、Linux市場から20万ドルの収益を挙げる必要はない。Windows版やMac版からの直接または間接的な売り上げや、もっと現実的な線として、入門書やCD-ROMの販売によってそれに見合う額を回収できれば、Xara LXプロジェクトを継続するつもりだ」

 もっと端的には、Xara LXプロジェクトが必要としている開発者のコミュニティーに関心を持ってもらえるかどうかが、この賭けの成否を決するのだ、と彼は語っている。「例えば、もし、後3、4カ月経っても、われわれを支援してくれる社外の開発者の目途が立たないようであれば、この実験的取り組みは失敗だった、とみなさなくてはならないだろう。うまく行かなかったとしても、われわれにまだ何とかしようという気があるなら、ただ、またあの閉鎖的な会社に戻るだけのことだ」

 この基準に従えば、Xara LXプロジェクトには既に成功の兆しが現れ始めている。ソースコードが1時間おきに更新されることもしばしばで、最新のダウンロード用tarファイルは先月のリリース時よりも2Mバイト大きくなっている――これは数週間で25%増えたことを意味する――ことも事実だ、とモール氏は話している。「興味を示してくれた人は既に相当な数にのぼる」という。さらに、もう社外の貢献者によってテキストルールの有効化などの取り組みが行われているのだ、と話す彼は興奮気味だ。「今のところ、とても興味深い展開になっている。当社の開発者たちは、プロジェクトが本当にどんどん進展していく様子を目の当たりにして、この試みがひどく気に入ったようだ」

 Xaraが、自ら発掘したこの新たな利権を収益に換えることができるかどうかは、まだ分からない。ただ、FOSSの市場で成功に値する企業が存在するとすれば、他社が障害ととらえた状況に機会を見出し、自社を再興させるべく努力を重ねた、Xaraがまさにそうであろう。

Bruce Byfield氏はセミナーのデザイナ兼インストラクターで、NewsForge、Linux.com、IT Manager's Journalに定期的に記事を掲載しているコンピュータジャーナリストでもある。


前のページへ 1|2|3       

Copyright © 2010 OSDN Corporation, All Rights Reserved.

注目のテーマ