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» 2006年05月17日 11時30分 公開

シンクライアント――なぜ今注目されるのかシンクライアントの真価を問う

情報漏えいをはじめとする問題が多発する中、クライアントのセキュリティを確実に保護するソリューションとして注目を集めているのが「シンクライアント」だ。

[富樫純一,ITmedia]

 つい最近まで、企業システムの主流は、アプリケーションをサーバとクライアントに分散したクライアント/サーバ型システムだった。しかし、企業システムとインターネットとの統合が進み、クライアント数が著しく増加するにつれ、いろいろな問題が起き始めた。特に、ネットワーク外部からの不正侵入、あるいはクライアントからの内部情報漏えいなどのセキュリティは、企業システムにとって大きな課題となっている。

 そうした中、クライアントのセキュリティを確実に保護するソリューションとして注目を集めているのが、シンクライアントである。

シンクライアントとは

 企業システムにおいて、エンドユーザーがアプリケーションを操作するためのクライアントは欠かすことができない。しかし一般的なPCは、多くのアプリケーション、そのアプリケーションで作成したデータを格納したハードディスクを内蔵し、光ディスクやUSBなど外部メディアにデータを移動できるさまざまな手段が用意されている。多くの企業は、こうしたPCをクライアントとして利用しているが、PCの高機能性が情報漏えいの原因になっていることは紛れもない事実である。

 もちろん、PCに各種制限を設定し、セキュアに利用することも可能だ。しかし、PCに制限を加えると、PC本来の使い勝手が損なわれるばかりか、逆に業務の支障になることも考えられる。

 そこで登場したのが、「シンクライアント」である。多機能なPCを「ファットクライアント」とやゆし、その対義語として生まれた言葉だ。

 シンクライアントは、クライアント側にアプリケーションやデータを持たず、サーバ側で処理されている内容を表示して操作する機器である。本来は、表示するモニタと、キーボードやマウスなどの入力装置、さらにサーバと接続するためのネットワークアダプタのみを備えたものを指す。ただし現在は、Windows XP Embeddedのような組み込みOSを搭載した機器もシンクライアントと呼ばれている。また、PCを利用しつつも、アプリケーションやデータの操作をサーバ側で処理する、いわゆる「サーバサイドコンピューティング」を実現するソフトウェアソリューションもシンクライアントと呼ばれることがある。

 シンクライアントの考え方は、メインフレームやオフコンのダム端末に近いものだ。しかし、主にキャラクタベースでデータの入力を行うダム端末とは違い、現在のアプリケーション環境はグラフィカルな画面で大量のデータをやり取りしなければならない。その点はUNIXサーバのX端末に近いが、UNIXのX端末が企業システムを凌駕できなかったのは、ネットワーク環境が整備されていない、サーバの処理能力が劣る、オフィスアプリケーションが存在しない、ハードウェアコストが高額、といった問題があったからだ。

 こうした問題が一つずつ解決された今、シンクライアントはようやく日の目を見ようとしているのだ。

シンクライアントのメリット

 シンクライアントの最大のメリットといえるのは、セキュアなデスクトップ環境を実現できる点である。

 シンクライアントでは、クライアントにデータを保持しないので、情報漏えいのリスクは大幅に抑えることができる。また、クライアントでソフトウェアが実行されないため、不正アクセスの被害に遭ったり、ウイルスやワームに感染したりすることもない。企業にシンクライアントが注目されている第一の理由は、このセキュリティ面である。

 もちろん、セキュリティ以外にもシンクライアントにはメリットがある。例えば、コスト面だ。

 シンクライアントでは、アプリケーションはサーバで稼働するので、クライアントにソフトウェアをインストールする必要がない。ソフトウェアによっては、ライセンスフィーを大幅に削減できる場合もある。管理者は、各クライアントにソフトウェアをデプロイすることなく、一元管理が可能となる。セキュリティパッチの適用などのメンテナンス作業も一括で処理できる。こうした管理上の手間の軽減は、そのまま管理コストの削減につながるものだ。

 また、シンクライアントは場所を問わずにアクセスできるのも大きなメリットになる。クライアントは入出力装置にすぎないため、オフィスだけでなく、自宅のPCや外出先のモバイル端末など、どこからでもアクセスし、常に同じ画面を使って作業が行える。

これからの課題と解決策

 セキュリティ面から注目されているシンクライアントだが、一般企業に確実に普及しているかといえば、まだまだこれからというのが現状である。シンクライアントの普及が進まない理由には、PCの使い勝手が実現できていないこと、シンクライアントの導入コストが急速に低価格化したPCよりも高価なことなどが挙げられる。

 そこで、シンクライアントへの移行を進める手段として注目されているのが、サーバサイドコンピューティングを実現するソフトウェアソリューションである。PCの使い勝手が捨てられないのであれば、重要な情報を扱う業務アプリケーションはサーバ側で稼働し、オフィスアプリケーションやメールなどのコミュニケーションツールはクライアント側で使おうというものだ。こうした使い方から徐々にすべてのソフトウェア環境をサーバ側へ移行していくのだ。もちろん、クライアントにアプリケーションとデータが存在する間は、情報漏えいのリスクは残るが、そのリスクはセキュリティ対策ソフトウェアと併用することで軽減することが可能だ。

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