企業コンピューティングから見たWeb 2.0(1)顧客満足度ナンバーワンSEの条件〜新人編(1/2 ページ)

Web 2.0は単なる一時の流行語として終わってしまうだろうか。それとも「キャズム」を超えて主流の位置を占めるようになるのだろうか。Web 2.0と企業コンピューティングの関係は興味深い。

» 2006年05月29日 08時00分 公開
[栗原 潔,ITmedia]

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 ご存じの通り、Web 2.0というキーワードに大きな注目が集まっている。関連書籍は一般書籍全体の中でもベストセラーにランキング入りするほどだ。しかし、Web 2.0という言葉の定義を行うことは非常に困難である。誰もが自分に都合の良い解釈でこの言葉を使おうとする傾向があるし、テクノロジーやビジネスモデルも時々刻々と変化しており固定的な定義を与えることが困難になっているからだ。

 しかし、Web 2.0がWebのバージョン2、つまり、ドットコム(Webバージョン1)がもたらしたものと同様のインパクトをインターネットにもたらす動きを総称する言葉であるという点は確かだ。ドットコム・ムーブメントがインターネットを世界的な情報共有の基盤へと変革したように、Web 2.0はインターネットをより強力で、広範なコラボレーションの場へと変革してくれるだろう。

 ここで、「Web」という言葉にこだわり過ぎるのはよくないと思う。Web 2.0におけるWebはインターネットの活用を総合的に表す言葉であり、Webサイト、Webブラウザだけに限定して考えるべきではないだろう。WebサービスにおけるWebもこれと同様の使い方だ(よくよく考えてみれば、WebサービスはWebサイトやWebブラウザとはほとんど関係がない)。

 Web 2.0は単なる一時の流行語として終わってしまうのだろうか? それとも、キャズム(前回の記事参照)を超えて主流の位置を占めるようになるのだろうか? 特に、Web 2.0と企業コンピューティングの関係は興味深い。

 かつては相容れないと思われていた企業コンピューティングの世界とドットコムの世界が最終的に融合したように、Web 2.0の世界と企業コンピューティングの世界も最終的には融合するだろう。その過程において、現時点におけるWeb 2.0系テクノロジー、Web 2.0系ベンダーと考えられているもの多くが消えていくことになるだろう。

 しかし、それは大局的にみれば些細な問題である。ドットコムバブル華やかなりしころに存在したベンダーの大部分も、現在では消滅し、忘れ去られている。しかし、勝ち組のドットコム企業(Amazon、eBayなど)がビジネス上の革新をもたらし、旧来の企業もドットコムにより自社を変革することで社会や産業は大きな利益を得ている。ドットコムムーブメントが全くの無駄だったという人はいない。Web 2.0においても同様の動きが起こるだろう。

 では、Web 2.0の本質についてもう少し詳しく見ていこう。ベストセラーとなった梅田望夫氏の『Web進化論』では、Web 2.0を「ネット上の不特定多数の人々(や企業)を、受動的なサービス享受者ではなく能動的な表現者と認めて積極的に巻き込んでいくための技術やサービス開発姿勢」と定義している。 

 これは、Web 2.0のアプリケーション的な局面をよく表した定義であると思う。ただし、Web 2.0にはインフラストラクチャー的な局面もある。Web 2.0を語るときには、両者を分けて考えた方が混乱しないと思う。まずは、Web 2.0のアプリケーション的局面について考えていきたい。

 梅田氏の定義は結局、集合知(collective intelligence)という考え方に行き着く。「集合知」とは特定の少数ではなく、不特定の多数により知識を構築していこうという考え方だ。

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