「モバイルセキュリティ市場のリーダーに」――独ウティマコが日本市場に本腰

ドイツに本社を置くセキュリティ企業、ウティマコ・セーフウェアが、日本市場への本格的な進出を開始した。まず3つのソフトウェア製品を中心に販売していく。

» 2006年06月26日 17時34分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 「欧州と日本とでは、テクノロジにそれほど違いはない。ただし日本の場合、個人情報保護法が厳しく、特に南欧などに比べるとセキュリティ実装にすばやく反映されていると思う」――ドイツに本社を置くウティマコ・セーフウェアの日本法人代表取締役、ヤーン・ボスフェルド氏はこのように語る。

 ウティマコ・セーフウェアは、PCやPDA向けに認証と暗号化、アクセス権限の制御といった機能を提供するセキュリティ製品を提供している企業だ。欧州では、セキュリティ技術が必須要件となる電子決済システムやETCなどの交通管理システム向けに暗号/電子署名やPKIといったテクノロジを提供し、インテグレーションなどにも携わっている。ドイツ連邦軍やヨーロッパ委員会といった政府/公共機関のほか、金融業界や製造、サービス業など、100ライセンス以上導入している顧客だけでも約3000社に上るという。

 日本法人の設立は2005年と競合他社にやや遅れたが、「デスクトップPCからノートPC、PDAやスマートフォンなど、幅広い製品ポートフォリオを提供することにより差別化を図っていきたい」とボスフェルド氏は述べる。

 手始めに同社では、クライアントPC向けに3種類の製品を提供していく方針だ。

 1つは、PC上に仮想HDDを作成し、そこに保存されるデータを自動的に暗号化することで漏洩などのリスクから保護する「SafeGuard PrivateDisk」だ。テクノロジーパートナーの1社であるIBM/Lenovoでは、ThinkPadの上位機種にSafeGuard PrivateDiskをプリインストールして提供している。

 「SafeGuard Easy」は、ブート時の認証とHDDの暗号化を通じてPCを保護するソフトウェアで、PCが紛失や盗難に遭ったとしてもデータの流出までは防止する。ブート時の認証手法として、USBトークンやPKIに基づく電子証明書のほか、TPM(Trusted Platform Module)チップなどもサポートしており、「仮に中のHDDを抜き出してデータを取り出そうとしても不可能だ」(ボスフェルド氏)。特にTPMのサポートは「差別化ポイントの1つ。Windows Vistaが正式にリリースされればさらに重要な役割を果たすことになるだろう」と同氏は述べた。

 3つめの製品は「SafeGuard LAN Crypt」で、企業のファイルサーバのデータに対するアクセス制御と暗号化を実現するソフトウェアだ。ただし、暗号/復号化処理はサーバ側でなくクライアント側のバックエンドで実施される。これにより、「サーバに依存することなく、パフォーマンスの低下をもたらすことなく重要なデータを保護する」とボスフェルド氏は述べた。

 ウティマコ・セーフウェアでは当面、パートナーを通じてこれら3つの製品を販売していく計画だ。ただし欧州では、企業全体のシングルサインオンとアクセス権限管理、アプリケーションや外部デバイスの利用コントロールといった機能を提供する最上位製品「SafeGuard Advanced Security」やPDA/スマートフォン向けの暗号化製品「SafeGuard PDA」といったラインアップも用意しており、NTTドコモなどの携帯電話キャリアとも話し合いを進めていく計画という。

 情報漏洩のリスクが大きく叫ばれる割に、暗号化技術は普及しているとは言い難い。ボスフェルド氏はその理由の1つに、使いにくさを挙げる。「クライアントベースのセキュリティは、エンドユーザーにとって使いにくく、管理しにくい。暗号化や電子署名、認証といった技術をゲートウェイ側で提供することにより、エンドユーザーがそれを意識する必要がなくなり、より使いやすくなるだろう」(同氏)

 現在、販売/テクノロジパートナーの獲得に向けて交渉を進めている段階だが、ボスフェルド氏は、「幅広いポートフォリオと豊富な機能を通じて差別化を図り、4年以内に、年間7億5000万円規模の売り上げを達成し、モバイルセキュリティ市場のリーダーを目指したい」と述べている。

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