リアルな世界でも起こるロングテール――RFIDのさらなる可能性

慶応大学の國領二郎教授は「RFIDソリューションEXPO」の基調講演で、空間と時間を可視化しつながることで、リアルな世界でもニッチな需要と供給を結び付けられるようになると話した。

» 2006年06月29日 18時04分 公開
[堀哲也,ITmedia]

 「今はコンピュータの中で起こっているロングテールを物理的な空間で行えるようになる」――慶応大学総合政策学部の國領二郎教授は6月29日、東京ビッグサイトで開かれている「RFIDソリューションEXPO」の基調講演で、RFIDがもたらすビジネスモデルの可能性を話した。

 ロングテールとは、バーチャルな世界のネット販売においてはヒット商品の大量販売に依存することなく、ニッチ商品の多品種少量販売で利益率の高いビジネスを行えるという理論。成果はその構成要素の2割に基づくという「20:80の法則」のアンチテーゼとして知られている。(関連記事

國領二郎氏 慶応大学総合政策学部の國領二郎教授

 國領氏によると、RFIDにより空間と時間を可視化しつながることで、リアルな世界でもニッチな需要と供給を結び付けられるようになるという。「例えば、タクシーは乗りたいと思っているときにはなかなかつかまらないが、じゃまだと思うときにはたくさんいる。このようなフラグメンテーション(断片化)が起こっているようなものをピンポイントでマッチングできるようになる。デバイスが時間と空間を知る技術が出てくることで、新しいサービスが生まれてくる」(同氏)

 RFIDのもたらす可視性の活用方法はこれまで、製品の一括読み取りによる検品の効率化や、データ投入の自動化による省力化などのメリットを中心に言われてきた。しかし「これらの効果は既に実証を終わり、もはや疑う余地はない」。三越では、婦人靴の在庫にRFIDを張り付けることで、顧客から要望のあった商品の在庫確認作業に掛かる時間を短縮し、単位時間あたりの商品推奨時間が増え、売上アップを実現した。むしろこの次にあるユビキタスネットワークの本質は、可視性を経済メリットにつなげる新しい結合(マッチング)にあるという。

RFIDが結ぶリアルとバーチャル

 現在、インターネットの世界ではデジタル化された情報(バーチャル)だけがつながっているが、RFIDがこのバーチャルな世界とリアルな世界を結び付けることにより大きな可能性を秘めている。

 「グーグルは絞られたニーズに対してピンポイントで投げ返して、最適な広告を表示できるようにした。ユビキタスネットワークでは、これにモノもつながるようになる。グーグルはピンポイント化の価値を示してくれた」(國領氏)

 しかし、売り手側だけの都合の良い理論でシステム化すれば反発は必死だ。消費者がメリットを受けながら、誰がどのような仕掛けでシステムを提供するか、どのような形態で対価を得るか、が重要な課題になってくる。

 「情報を持つことがパワーだということは、グーグルにより分かりやすくなった。RFIDの背後にある可視化データベースネットワークは、誰が流れを設計するかで、そのチャネルでのリーダーシップに直接的に結び付いてくるものになる」(同氏)

 國領氏は、最終的には現場と消費者メリットを一番に考え、ビジネスモデル化や社会モデル化していくことが大切になるとした。

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