最新SSL VPN獲得でMSのハードウェア事業参入の可能性が(3/3 ページ)

» 2006年07月05日 07時00分 公開
[Peter Pawlak,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版
前のページへ 1|2|3       

Whale買収の目的と今後の動向

 ISA Serverは既にいくつかのSSL VPN的な機能(トラフィックをWebアプリケーションに渡す前にユーザーを認証する機能や基本的な検疫のサポートなど)を備えている。しかし、非管理デバイスからのリモートアクセスのサポートを必要とするユーザーの多くは、SSL VPN専業ベンダーの製品を導入する傾向にある。IDCによると、MicrosoftがISA 2004をリリースした2004年上半期のファイアウォール市場におけるMicrosoftのシェアは約10%である(市場リーダーのCheckPointは45%)。ISA 2004のリリース以降2年間でこの状況が実質的に変化しているかどうかは定かではない。Microsoftはおそらく競争力のあるSSL VPN機能を追加することで、拡大するSSL VPNアプライアンスベンダーの脅威を払拭すると同時に、ISA Serverのシェア拡大を促進できると考えたのだろう。

 SSL VPN市場の競争が激しいことと、ほぼすべてのベンダーが比較的規模の小さい企業であることから、既存のベンダーを買収する方が、Microsoft社内で十分な競争力があるテクノロジーを独自開発するよりもコストを抑えられたと思われる。また、Whale以外の既存ベンダーはLinuxまたはUnix OSベースの統合アプライアンスを販売しているため、Microsoftプラットフォーム向けのソリューションのみを手がけるWhaleは買収の候補として特に魅力的だ。

 ただし、この買収がISA Serverの販売促進を図る以上の何らかの戦略的な目的を持っているかどうかは疑わしい。サードパーティから優れたリモートアクセスソリューションは提供されていないが、このためにSharePoint、Exchange、またはLive Communications ServerをはじめとするほかのMicrosoftサーバ製品の売上が阻害されてはいないからだ。

 MicrosoftはWhaleのテクノロジーをどのような形で自社製品に取り込んでいくか明らかにしていないが、何らかのタイミングでISA Serverに組み込まれるものと思われる。ISA Server 2006のリリースが延期される可能性は低いが(2006年9月リリース予定、現在はリリース候補版が作成されている)、ISA Server 2006の機能を拡張するアドオンとしてWhaleテクノロジーを提供するか、Windows Server LonghornベースとなるISA Serverの次期リリースに組み込むことが考えられる。

 ただし、Whaleのe-Gapテクノロジーはプロプライエタリなハードウェアに依存するものであるため、Microsoftがアプライアンスビジネスに乗り出す可能性も消えてはいない。Microsoftはソフトウェア製品としてISA Server 2004を販売するほか、Celestix、Hewlett-Packard、Network EnginesなどのOEMにもISA Serverを提供しており、これらOEMはISA Serverベースのアプライアンスを開発している(Microsoftによると、現在ファイアウォール/VPN市場全体では、ソフトウェアのみのソリューションと比較してアプライアンスは10倍多く売れているという)。Microsoftはこれまでハードウェアビジネスへの参入は控えてきたが、この方針を変更した場合は、現在のISA Serverアプライアンスパートナーとの関係がこじれることになるだろう。e-Gapテクノロジーをこれらのパートナーにライセンス提供することもできるが、パートナーによる売上の伸びが鈍いと感じた場合は、独自のアプライアンスの開発および販売に踏み切ることも考えられる。

前のページへ 1|2|3       

Copyright(C) 2007, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc. All right reserved. No part of this magazine may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted in any form or by any means without prior written permission. ISSN 1077-4394. Redmond Communications Inc. is an independent publisher and is in no way affiliated with or endorsed by Microsoft Corporation. Directions on Microsoft reviews and analyzes industry news based on information obtained from sources generally available to the public and from industry contacts. While we consider these sources to be reliable, we cannot guarantee their accuracy. Readers assume full responsibility for any use made of the information contained herein. Throughout this magazine, trademark names are used. Rather than place a trademark symbol at every occurrence, we hereby state that we are using the names only in an editorial fashion with no intention of infringement of the trademark.

注目のテーマ