新たな方向性を模索するBPMベンダー各社

HandySoftやSavvionといったBPM専業ベンダーは今、新たなプレッシャーにさらされている。

» 2006年07月05日 12時19分 公開
[Renee Boucher Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 BPM(ビジネスプロセスマネジメント)ソフトウェアを開発しているベンダーにとって最近の状況は、ボブ・ディランの歌ではないが、「時代は変わる」という表現がぴったりと当てはまるようだ。

 最近確立されたプロセス主体型のアプローチをアプリケーション/プラットフォーム開発に採用する新たな競争相手が多数登場する中、BPMベンダー各社に対するプレッシャーが高まっている。これらの競合企業には、IBMやBEAといった伝統的なミドルウェアベンダーもあれば、SAPやOracle、MicrosoftといったERP(Enterprise Resource Planning)プロバイダーも含まれる。

 その一方で、合併・買収という脅威も絶えず存在する。MetaStormによるCommerceQuestの買収(2005年12月)や、BEA SystemsによるFuegoの買収などは、まだ記憶に新しい。

 またBPMベンダー各社は、SOA(サービス指向アーキテクチャ)やSaaS(サービスとしてのソフトウェア)といった技術の動向にも注意を払わなければならない。SOAは手法であり、SaaSはデリバリーモデルであるが、両技術ともBPMとの結び付きが強まっているため、競争がますます顕在化している。

 さらに、BPM技術自体の進化がある。ベンダー各社はここ数年、「モデル化、自動化、実行、管理」というメッセージでBPMを推進することに注力してきた。しかし用語そのものが、ワークフローからBPM、さらにはBPMS(BPMスイート)へと変化し、最近では、BPMはSOAの世界の機能の1つとして位置付けられるようになった。

 BPMプロバイダーであるHandySoft Globalのブライアン・ボックスマンCOO(最高執行責任者)は、「企業ユーザーがどんな技術を期待しているのかについて、われわれは独自に検討した。状況は目まぐるしく変化しつつあり、これまでやってきたことが通用しなくなっている」と話す。

 HandySoftやSavvionといったBPM専業ベンダーにとって、市場環境の変化は、従来のビジネス手法を見直し、将来に向けた新たなソリューションを編み出さねばならないことを意味する。

 7年前に米国市場に進出したHandySoftは、経営陣を刷新し、同社の将来的方向性を検討するためのたたき台となるプランを策定した。同社は6月29日、4人の新しい経営幹部を発表した。CEOに指名されたのはジャエ・アーン氏で、COOのポジションを与えられたのがボックスマン氏である。CFO(最高財務責任者)にはウィリアム・チャッタートン氏が就任し、マーケティング担当副社長にはスコット・バーン氏が指名された。

 一方、Savvionでは、それほど抜本的な改革ではないにせよ、自社の標準デリバリーモデルを大幅に見直した。同社は6月28日、「BusinessManager 6.8」プラットフォームを通じて新しい機能を投入した。この機能を利用すれば、ビジネス部門のユーザーでもIT部門のユーザーでも、ビジネスプロセスをモデリングすることが可能であり、Savvionのプロセスモデルを無料でダウンロードすることもできるという。

 カリフォルニア州サンタクララに本社を置くSavvionのパトリック・モリシー上級副社長は、「誰でもプロセスを『現状のまま』モデリングすることができるプログラムの開発に成功した」と話している。

 Savvionはさらに、「ProcessXchange」というBPMコミュニティーも発表した。このコミュニティーでは、ユーザーがプロセスの改善に関する疑問や経験、洞察などを共有することができる。ProcessXchangeサイトでは、無料のプロセスモデル(実行するにはSavvionのソフトウェアが必要)や、ベストプラクティス集、アドバイスが提供されるほか、ユーモアコーナーも用意される。Savvionはこのコミュニティープロセスを立ち上げるのにあたり、「Show Us Your Process」(あなたのプロセスを見せてください)というコンテストを開催する。このコンテストは、「最も優れたビジネス改善プロセス」「最もこっけいな個人的プロセス」「最もばかげた組織的プロセス」という部門に分かれている。

 HandySoftでは、真剣な選択肢を検討中だ。同社は、文字どおり自社の将来の方向性を決定付ける2種類のビジネスプランを策定した。1つは、ミドルウェアプラットフォームプロバイダーとして勝負するという路線。もう1つは、個別業界向けのオンデマンドBPMベンダーを目指すという方向だ。

 バージニア州ビエナに本社を置くHandySoftのボックスマン氏は、「当社が大きな影響力を持っている金融、政府、医療などの個別市場に狙いを定め、当社のBPMプラットフォームを早急にサービスとしてのソフトウェアへと進化させるのが賢明だといえそうだ。年末までには、最終的な路線を打ち出す予定だ」と話している。

 ボックスマン氏によると、新たな方向性を目指すという決定はHandySoftの経営にも影響を及ぼし、資金調達、戦略提携、技術開発などの将来的なニーズを左右するという。

 「決定を急ぐつもりはない。状況を見極め、総合的な戦略として決定するつもりだ」とボックスマン氏は話す。

 ボックスマン氏によると、HandySoftがどちらの路線を選ぶのか分からないが、同氏の個人的な気持ちとしてはSaaSに傾いているという。「当社の成長という観点から見れば、SaaSのほうが有望だ。ミドルウェアに関していえば、すべてのアプリケーションとの連携をすでに実現しているものの、これは非常に競争の激しい市場だ」(同氏)

 考慮すべき問題はほかにもある。合併・買収もその1つだ。HandySoftでは、SOA分野の企業を買収するか、もしくは自社を売却するというアイデアを検討している。「合併するのが得策であることが分かれば、その選択肢も検討するつもりだ。遅かれ早かれ、Microsoft、Oracle、SAPといった企業がBPM分野に進出してくるだろう」とボックスマン氏は話す。

 ボックスマン氏は、ERP分野から参入するベンダーとの競争が激化するのは2年ほど先だとみている。ミドルウェアおよびEAI(エンタープライズアプリケーション統合)分野のベンダーは、すでに参入しているという。HandySoftでは当面、顧客および見込客に対して、ERPをカスタマイズせずに配備するのがベストなアプローチであると説明している。カスタマイズを必要とするユーザーには、BPMスイートでアプリケーションをラッピングするようアドバイスしているという。

 だが、これも当面の対策に過ぎない。ボックスマンをはじめとするHandySoftのスタッフは、自分たちを取り巻く世界が変わりつつあることを認識している。そこには、現在の地位に安住するという選択肢は存在しない。

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