Web2.0型ビジネス研究 ショッピングSNS編Web2.0型金融ビジネスは成り立つか(2/3 ページ)

» 2006年07月10日 08時00分 公開
[アイティセレクト編集部,アイティセレクト]

 では、なぜ「ビルコレ」でモノが売れるのか。

 まず、SNSという「閉じられた輪」の中でのビジネスであることを指摘できる。その中のメンバーは、基本的に「友だち」か「友だちの友だち」といった具合に、「信頼の糸」でつながっている。つまり、そこに流れる情報の信ぴょう性はメンバーにとってすこぶる高い。それは、商品に対する評価でも同じだ。従って、だれかが提携サイトでモノを買い、日記の中でそれについて高い評価を記せば、ほかの人が買いやすくなる傾向が生まれるのである。

 その上、売らせる/買わせる動機付けとなる、ユニークなアフィリエイトの仕組みが取り入れられている。AさんがSショップで買ったモノを気に入って「ビルコレ」でメンバーに紹介し、それを見たBさんが「じゃあ、私も」と買えば、SショップからAさん、Bさん共に報酬が支払われる。売り上げに対する報酬の割合は提携サイトによるが、Aさん(紹介した人)とBさん(買った人)への配分率は、ビルコムが1:2に設定した。こうして買った人に多く支払われるようにし、購買意欲をそそっているのである(※4)。もちろん、Sショップはビルコムに対し、別立てで手数料を支払っている。提携サイトにとっては、そこまでしても、購入率の高い「ビルコレ」は魅力的なのである。

 通常、ネット上でだれか知らない人に購買を促されたからといって、すぐさま「買う」という行動に飛びつく人は多くないだろう。相手に対し、「アフィリエイトだからじゃないか」「売り手側企業の回し者じゃないか」などと疑いをかけたくなるものだ。

 ところが、「ビルコレ」はそうした疑念を払しょくしていると、太田氏は言う。その根拠は、通常のアフィリエイトと違う2つの特徴にある。

 まず、購買を勧める相手が不特定多数ではなく「友だち」などに限られていることだ。「ビルコレ」は、リアルの世界により近いつながりの間で交わされるアフィリエイトシステム、ということである。

 それから、報酬がシェアされること。友だち同士なのだから、分配しても構わない。紹介者側にとって、「もうける術」として考えられる仕組みではないということである。

 こうして、ビルコムは、Web2.0型サービスでモノを売れやすくする仕組みを築いている。

 「『ビルコレ』は、ロングテールとは逆のマーケットを狙っているところがある。つまり、(80:20の法則の)80%の部分。それは、だれも手を出して(=既存のショッピングモールなどが提携して)いなかった、ダイレクトマーケティングをやっているEC(=直販)サイト。そうしたところは、どのコミュニティにも属さず、またアフィリエイトも展開せず、自社でマーケティングしている。そして、会員を集め、メルマガを発行するなどして囲い込みを図ろうとする。それならばSNSを持てばいいのだが、リスクを背負いたがらないため、自らSNSを築こうとはしない。そこで、その受け皿を作れば需要があると見た」(太田氏)

 今後は、「Web2.0以上の仕組み」「Web2.0をもう少し変えたサービス」の展開を考えているとのこと。夏〜秋には新機能の追加もあるようだ。現在のところメンバー数は順調に伸びており、毎月社内目標を上回っているとか。平均購入単価は3500円/回。「ビルコレ」は、数字的にも予定通り「成長」しているというWeb2.0型ビジネスなのである。

「ビルコレ」のトップ画面

※4 アマゾン・ジャパンの商品に関しては、同社のグローバル・ポリシー上、紹介者側にしか払われない。つまり、10(紹介者):0(購入者)

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