Web2.0的ビジネスへの条件Web2.0でビジネスはどう変わるか ― その2(2/2 ページ)

» 2006年07月11日 08時00分 公開
[ロビンソン,ITmedia]
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来年フィード普及率は3割へ

――フィードパスは何を目的とした会社でしょうか。

小川 (サービスとしての)Feedpathとは、Web型RSSリーダーをコアとしたネットサービスです。RSSフィードを効率的に購読管理し、タグによって記事検索や他人との情報管理が簡単に実現できるようになることで、フィードだけで存在する新しいインターネットへの小道(パス)を、コンシューマやイントラネット用に提供しようとしています。インターネットユーザーにおけるフィードの普及率は、昨年が5%だったのに対し、今年は3倍の14%に増え、さらに来年には30%に達するとみられています。これまでインターネットの利用は、メールとWebサイトを見ることに費やされていましたが、今後はフィードを使う時間が一層増えることになり、第3のメディアになるまで浸透するでしょう。(企業としての)フィードパスは、そのトランザクションをビジネスに展開し、フィードを使う人たちを増やすためのサービスを提供していくことになるわけです。

――そうなると、ポータルから入って、情報を探し出すという行動がなくなってくる?

小川 まさにその通りで、ユーザーの行動が全く違ったものになってきます。RSSリーダーで情報収集し、そのフィードしか見ないユーザーが増えると、もはやWebサイトには行かず、フィードの収集だけで終わってしまうため、このような構造に対応したエンターテインメントやコマースが普及します。今後はオンラインカレンダーやボッドキャスティングなど、リーダーをベースに多くのアプリケーションが連携し、いずれモバイルにまでつながっていくと考えています。マイクロソフトもSSE(注1)フォーマットを作っており、フィードの普及が3割を超えてくると、そのような世界は間近に来ているといえるのです。

Feedpathログイン後画面

Web2.0的企業には金儲けのニオイがしない

――Web2.0的な企業となる条件とは何でしょうか。

小川 まず、データを使うことによって何かができるということを完全に理解することが大切です。また、サービスを囲い込まないことも重要です。オープンデータという発想により、自分を経由することでデータに付加価値をつけること。その付加価値がお金になることもあるし、その付加価値のために人が集まり、既存のビジネスも活性化する可能性もあります。そこには、Ajax(注2)を使う云々は全く関係ありません。

 世の中にはデータを使い慣れない人も多く存在するわけで、そのような人に対し、優しいインタフェースと使い勝手が面白い仕組みをAjaxで実現しようとしているに過ぎないのです。それが即ちWeb2.0ではない。

 したがって、データの扱いや機能というものをユーザーのためにきちんと考えて提供できることも条件となります。仕組みは良くできているサービスでも、使いづらいものならば、利用者視点で提供されているサービスとはいえず、それはWeb2.0的とは言えません。また、最初から課金ありきや、広告・告知ありきで始めるのではなく、ユーザーからデータをいただく努力を懸命にし、そのデータを流通させることによって、最終的に収益を上げられるモデルを考えられることが、Web2.0的ビジネスの基本であると考えます。それが欠落したまままならば、旧態のビジネスから抜け出せないと思います。

――オープンソースもその点では共通した特徴を持っていますね。

小川 そうですね。貢献することで得ることも叶えるといったムードを持つことは大切です。Web2.0的と言われる企業には、米国の西海岸的な、どこかハッカーチックでヒップホップな香りがします。グーグルも、収益になるサービスと並行して、一見何の利益になりそうもないサービスを提供し、周囲を驚かせるところがあります。そのように研究開発を進めることが、世間の同社に対するテクノロジーオリエンテッドなイメージとともに“クール”なイメージをも作り出しているのです。金儲けのニオイがしないところが、Web2.0的企業の共通した特徴だともいえるでしょう。

 ビジネス的にも儚さを持つがゆえに、全く新しいものを生み出せる。それは、今あるものを変えるリノベーションではなく、全く新しいモノを生み出すイノベーションなのです。

――ありがとうございました。

注1:SSE(Simple Sharing Extensions):従来、一方向だったRSSのフィードに双方向のサポートを加える技術。Windows Vista にも実装される予定。

注2:Ajax(Asynchronous JavaScript and XML):JavaScriptのHTTP通信機能を使うことで、Webページをリロードせず動的にページ内容を更新する仕組み。

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