このように多くのメリットがあるFC-SANだが、最大のデメリットと言えるのが導入コストの高さである。ファイバチャネル関連機器が高価格ということもあるが、それよりも光ファイバによる新しいネットワークを敷設しなければならないことの負担が大きい。もちろん、クライアントPCのように、全社にネットワークを敷設するわけではないが、データセンターやサーバルームがいくつかに分散している環境でSANを構築するには、それなりの出費を覚悟しなければならない。
そこで登場してきたのが、既設のIPネットワークを利用するIP-SANである。この技術では、ファイバチャネルを利用せず、イーサネットとIPプロトコルでSANを実現するものである(図3)。
IP-SANは、FC-SANに比較して、コスト面以外にも優位性がある。IPはLANやインターネットで実績があり、相互接続性ではFC-SANよりも有利である。また、FC-SANよりも長距離接続が可能であり、遠隔地のミラーリングやリモートバックアップなどのディザスタリカバリシステムを容易に構築できる。管理面でも、サーバ管理者が使い慣れたTCP/IPを使用しているため、扱いやすい。さらに、FC-SANの大きな特徴であったパフォーマンスの面でも、実はIP-SANのほうが有利だ。ファイバチャネルの10Gbps対応製品がこれから出てくるのに対し、イーサネットではすでに10Gbps対応製品が普及し始めているのだ。
ただし、データ伝送経路としてIPネットワークを利用するために、いわゆるIPネットワークに負担をかけない「LANフリー」というFC-SANのメリットは実現できない。さらに、LANだけではなく、サーバにも負荷をかける。TCP/IPというのは、もともと低速な通信インフラ時代に作られたプロトコルであり、大量のデータトラフィックが発生するストレージアクセスの利用を想定していない。そのため、プロトコルを処理するためにサーバ本体に大きな負荷がかかるのだ。
とはいえ、サーバの高性能化、イーサネットの高速化、そしてIP-SANを実現する技術が標準化されたことで、これまでコスト面が原因でFC-SANの導入をためらっていた企業システムにも、SANの導入が進み始めている。
FC-SAN | IP-SAN | |
---|---|---|
I/Oプロトコル | SCSI | iSCSI |
ネットワークプロトコル | ファイバチャネル | TCP/IP |
I/Oブロック長 | 128MB | 64KB |
データ単位 | ブロック | ブロック |
パフォーマンス | 高 | 中 |
コスト | 高 | 中 |
次回は、IP-SANのテクノロジについてみてみよう。
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