PCオタクの新入社員がやってきた! そのとき管理者(あなた)は…良い管理者 悪い管理者 普通の管理者(4/5 ページ)

» 2006年07月25日 19時53分 公開
[木村尚義,ITmedia]

悪いシステム管理者

オタク社員を放置すると
気付かぬうちにもはや手遅れとなる……

 〔悪いシステム管理者・鈴木洋〕はA社のシステム管理者である。鈴木はPCがあまり得意でなく、PCオタク社員も苦手だ。でも彼らオタク社員からいろいろ教えてもらえば、管理業務も何とかなるだろうとタカをくくっている。もしオタク社員がクライアントPC環境を変更したとしても、自分のPCだ。自由にさせよう。

 他のユーザーに迷惑をかけるものでもないし、コンピュータに詳しいという話だから、どのようにでも使わせればいい。自分の好みでいろいろと環境を変更できるのがPCの魅力なのだから。

 そんなことを考えていたときに山田健太が配属された。健太がウワサのオタク社員だという。しかし、実際に会ってみると身だしなみもきっちりしているし、受け答えもちゃんとしている。入社の理由は、A社の主力商品である食玩というジャンルに将来性を感じているからだという。

 鈴木は安心した。

 もっとも、あまりにも常識はずれの人間なら、人事が入社面接でハネているだろう。健太が配属になった時、一応、全社同じ環境で作業していることだけは伝えた。環境変更の禁止もその許可も特には伝えなかったが、統一環境の件は伝えたので、きっと理解してくれるだろう。

 一方、健太のほうは鈴木がPC環境の変更禁止を明言しなかったから、A社では統一環境のPCを配布した後は、自分でカスタマイズして使うのだと解釈した。健太は同僚にフリーソフトをいろいろ紹介していた。鈴木の耳に入ってくる分には、健太の紹介したソフトウェアは大変便利で、しかも無料で使えるそうだ。他の営業部でも、健太の紹介したソフトウェアのうわさを聞いて次々とインストールしているという。

 しかし、鈴木が全社のトラブル統計をチェックしてみると、健太の配属された部署だけが20%近くものトラブル増加を記録していることに気付いた。それに便利なソフトウェアを使って業務効率がアップしているはずなのに、他の営業部門と売上げは大して変わらない。このまま放置していては、健太の影響で社内全体にトラブルが広がることは目に見えていた。でも今さら、自由にさせていた健太に、いきなり環境を変えるなというお願いもできない。

 全社的に環境を統一するといったポリシーは、もう、誰も守らなくなってしまっていた。

教訓

私物PCの持ち込み対策は、手間がかかる。

 オタク社員に限らず、正社員のPC利用に対しても無法状態だとすると、トラブルが発生した場合の対処にポリシーを設けることができない。

 統一したルールに基づきPCを使わせれば、過去の事例を参照することで大方のトラブルは解決することができる。社員が勝手にPCの構成を変更してトラブルを起したらTCO(所有しているだけでかかるコスト)が確実に増加してしまう。トラブルに対処することでPCスキルは向上するかもしれないが、本来は企業に利益をもたらすべき業務時間が、個人的なPCスキルの習得に向けられてしまうこととなる。会社によってはPCの使用にルールを設けていない場合がある。


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