ID管理成功の秘訣は「まずは目標を限定せよ」ヒット商品分析●アイデンティティ管理ソリューション(3)(2/2 ページ)

» 2006年08月03日 10時52分 公開
[越後耕一,アイティセレクト編集部]
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当分、崩れそうにないかトップ3の牙城

 IDC Japanの調査によると、ID管理ソフトの05年の市場規模は400億円弱となっている。そして市場は2010年までは年平均13%の成長を続け、その規模は700億円強になると予測している。つまり、今後5年間でほぼ倍増するということだ。

 ベンダーのシェアを見ると、20%強の富士通をトップに、10%強の日立、IBMと続いている。IDC Japanリサーチ第2ユニット(ソフトウェア/ITサービス)グループディレクター、井出氏は「この3社の牙城はそう簡単には崩れない」と言う。「メインフレーム絡みもあるし、官公庁なども含めて持っている案件も多く、アイデンティティの統合管理をいろんなシステムに追加で横展開ができるという強みがあるから、他のベンダーが単独で入っていくのはなかなか難しい」と分析する。

 逆に言えば、他のベンダーでも差別化が明確に目に見えたり、使い勝手やメンテナンスのし易さなどに優れている製品を持っていれば、入り込める可能性はあるということだ。また、アイデンティティ管理は人事情報、サプライチェーン、SFAなどあらゆる分野のシステムの刷新に不可欠なので、それを切り口にしてビジネスを広げることもできる。もちろん、そのためにはコンサルティングも含めて総合力が必要となるが、すでに中堅企業やニッチなところでビジネスを展開しているベンダーもある。

見極めを付けて段階的に進めることも大事

 IDの統合管理は確かに時代の流れであるから、どの企業も避けて通ることはできない。だからと言って、「何もかも新しいものを入れる必要はない」と富士キメラ総研の山本氏は言う。「個人情報保護法の施行に対処するために、企業はセキュリティ対策について十分に勉強し、その実践に力を入れて取り組んできたのだから、それをベースにしてもう少し強固にすることを考えるという手もある」

 ID管理への投資というのは、企業の社会的な信頼性の向上とか、社会に対する責任を果たすための投資であり、攻めの投資ではなくてあくまでも守りの投資である。もちろん、ID管理はトップダウンで推進されるものだから、予算も特別枠として組まれ易くはなっている。とは言え、効率を考えることも大事だ。

 そこで、井出氏はこうアドバイスする。「ID管理を全社的に統合しようと思ったら、あれもこれもとなり、大変なことになるので、ある程度範囲を決めて段階的にやっていった方がいい」と。

 日本版SOX法が施行されると、コンプライアンスへの取り組みが企業の取引条件の一つになることも考えられる。その意味でも、ID管理はますます重要になるし、統合化に向けた早急な取り組みが必要になる。それだけに、市場へのベンダー各社の期待が膨らむところだ。

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