「工場長にどう報告すればいいんだ」と詰め寄られた原価管理担当者のアイデア(3)(2/4 ページ)

» 2006年08月10日 14時27分 公開
[北山一真,ITmedia]

コストコントロールに不可欠な動機づけ

 本題に戻るとしよう。設計、開発段階でコストの80%が決まるのは理解してもらったとして、ではどうやってその80%のコストを作りこんでいくかが重要である。そこには、大きく2つの問題が立ちはだかっている。

 1つ目は、設計、開発段階でコストが決まるにもかかわらず、設計、開発者がコストを把握できない企業が多いということ。冒頭の例でも述べたが、社内の標準品や推奨品のデータすら見ることができないケースもある。標準品や推奨品は、コスト低減や品質向上に影響してくるため、重要な情報なのである。

 これは単に社内のデータが整備されていないため部門間で共有することができない場合もあれば、データが整備されていても「開発、生産、販売」で分社しているため、会社間でデータ共有ができていないケースもある。コスト情報などは、基本的にすべてのデータを開示するべきであろう。

 利益がどこから生まれるかをいま一度考えてもらいたい。図3-2に生販開と顧客の関係を簡単に示してみた。開発会社や生産会社からすると販売会社が顧客となるだろうが、グループ全体でみた場合は、販売会社の顧客からしか利益は得ることが出来ない。その利益を生販開の会社で分配しているだけである。よって、販売会社、開発会社、生産会社は協力して、グループ全体として利益獲得できるような取り組みが必要である。データ開示に関しての壁があるのであれば、会社レベルで方針を明確にし、実務レベルで困ることのないようにするべきだ。

図3-2 生販開分社の利益構造

 次に2つ目の問題として、設計、開発を行う段階で具体的目標値が算出できていない企業が多いということ。設計、開発段階でコストの80%が決まるから重要だと熱心に説いても、どこを目指してコスト低減をしていいか分からなければ、暗闇の中を走っているのと同じだ。すなわち、設計・開発にかかわる、おのおのの部署に具体的数値などの明確目標を設定することが重要になる。

 ここで注意すべきことは、コスト情報の「見える化」や設計、開発段階のコストシミュレーション機能のIT化で解決しようと安易な判断をしない方がよいということである。

 IT化は非常に重要であることは否定しない。安価部品情報が見えることで設計者が無駄に高い部品を選定することを防ぐことができるし、コストシミュレーション機能を使うことにより、構成やユニットを変更し、瞬時にコストを再計算することもできる。

 しかし、安いコストの部品が見えて、瞬時にコストを計算できる仕組みがあっても、どこを目指してコストを下げればいいか分からなければ、ITツールも意味もなさない。ITツールは便利で必要だが、どのように使うかの動機付けがないとユーザもなかなか受け入れてくれない、使ってくれないでは効果など出ない。

 ここでは、動機付けについて触れていきたい。

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