「工場長にどう報告すればいいんだ」と詰め寄られた原価管理担当者のアイデア(3)(4/4 ページ)

» 2006年08月10日 14時27分 公開
[北山一真,ITmedia]
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目標値達成のためのPDCAサイクル

 各部門に対して目標値を割り付けて動機づけを行ったなら、次にDRごとに目標値の達成度をチェックすることが重要となってくる。図3-4を参照頂きたい。PLMにおけるコストマネジメントのPDCA(Plan Do Check Action)を簡単に記述してみた。

 前述した通り、「Plan」として図面作成前に販売価格から算出された目標原価と成行原価を比べることで、原価低減の目標値を割り付ける。「Do」として、割り付けられた目標値を達成するために各部のアイデアを出しとアイデアの検証を行う。それがValue Analysis(VA)およびVE(Value Engineering)活動などである。

 Value Analysisは、顧客要求を、最適コストかつ必要十分な品質(機能)で充足させることができるよう、材料の特性、設計方法、加工技術など多面的に検討、分析を行うこと。Value Engineeringは、製品やサービスの価値を向上させるために用いられる。目的物の機能を低下させずにコストを低減する、または同等のコストで機能を向上させるための技術のこと。

 そして「Check」としてDRごとに目標値に対しての達成度を確認する。割付に対しての推進責任部署毎の進捗を管理し、どの部署の原低推進が遅れているかを明確にする事が重要だ。最後に「Action」として、Checkで進捗に遅れが出た部署に関しては、対策を検討したり、割り付け金額を見直したりする

 これらのコストに関するPDCAサイクルをプログラムマネジャーが推進できる体制やプロセス整備が必要となってくる。

 最後に、少し話がそれるが、プログラムマネジャーについて触れてみたい。プログラムマネジャーは、昔は主流であった主査という役職にあたる。近頃、製品軸でのプロジェクト管理の重要性が増したため、主査という肩書きがメジャーに戻っている傾向にある。

 主査は、製品を構成する多くの設計部門、デザイン部門、性能の試験評価部門、生産技術部門、販売部門などと接点を持ちながら、これらのチームをまとめつつ、1台の製品を作りだしていく職能のことを指す。

 そのプログラムマネジャーは業種、業態によって担当する部署が異なっている。例えば、顧客の要望を迅速に反映させるために営業が就任したり、品質を確実に確保するために設計開発者が就任したり、営業や設計開発などの実活動部隊ではなくプロジェクト管理を得意とする専門部署が就任したりとさまざまである。わたしが知っている限りでは、設計開発者が就任しているケースが多い。そうなると、品質のフォローは十分行われているが、コストのフォローが後回しにされているケースが見られるようになる。

 プログラムマネジャーに就任する部署に差があるにしても、開発プログラム全体を通してQCDバランスよく、進捗フォローすることが必要だ。

 特にコストは後回しにされがちなため、前述の図3-4のマネジメントプロセスを整備することが先決となる。そのマネジメントプロセスが整備された後に、さまざまなサポートツールを導入することをお奨めする。

PLMにおけるコストマネジメント概要

 以上、PLMにおけるコストマネジメントの「キモ」に触れてみた。繰り返しになるが、コストシミュレーションツールなどのITを導入すればコストマネジメントが推進するわけではない。コストの見える化、各部門への動機づけ、それらをマネジメメントするプロセスの整備が重要である。

 今回は、あえてコストマネジメントに必要な一番根底の部分のみ(基礎体力の部分)に触れたが、本来それだけでコストマネジメント力が強化されるわけではない。これらが整備された後には、「受注可否判断」「研究開発と原価企画の関係性」「予算管理方法」「プログラムと職制の連携」など、さまざまな問題を解く必要がある。

 第1回目から3回目までで、売価設定の考え方、売価設定におけるキモ、コストコントロールのコアなポイントなど、読者の皆さんの企業ですぐに実行できる事や本当に必要な事を中心に触れた。企業は一朝一夕に変わるものではないが、諦めずに1つ1つ改善し、競争力を保つことができるコストマネジメント力をつけてもらいたい。

筆者プロフィール:北山一真(ネクステック ビジネス変革推進部マネジャー)IT系のコンサルティング企業にてERP導入プロジェクトを主とした業務改革推進、システム導入などに従事し、現職に。現在、大手グローバル製造業のコスト管理、全社システム構築に関するプロジェクト管理に従事。



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