SNSはパソ通コミュニティーの再来なのか?(2/4 ページ)

» 2006年08月11日 20時41分 公開
[森川拓男,ITmedia]

 もちろん、現住所などの個人情報については、公開範囲を「非公開」「友人まで」「友人の友人まで」「全体に」といった形で公開範囲を設定できるので、安心感はある。しかし、名前がmixi全体に公開されてしまうのは、果たしてよいことだろうか? そしてこれは、mixiに限らず、ほかの招待制SNSでも同じことがいえるだろう。異なるのは、ユーザー数の違い程度だ。

 身元が確かだから安心できる――この考え方は、一定のユーザー数を超えた時点で(知名度が高まった時点で)幻想となったといえる。しかし、これが一概にデメリットとは言わない。一定のプロパティ情報を持つ者同士がつながる場として、SNSは十分に魅力的だからだ。各企業などは、この点に注目しているのだ。

パソコン通信的なコミュニティーの復活なのか?

 企業がサービスを開始するに当たり、考えることはまずメリットだ。マイナスになることを率先して行う企業は少ないだろう。

 無料のブログサービスを提供することは、ユーザーの興味を自らのドメインに向けさせる、また、場の活性化を求めるという大きな意味があった。広告収入なども見込めるが、何よりそれをきっかけにしてユーザーの囲い込みができれば、ネット企業にとっては何よりも財産となるだろう。

 しかし、どこもかしこもブログサービスを始めたことで、「ブログ」での集客は難しくなってきたのは事実だ。そこで、独自のブログアクセサリを開発したり、機能強化を行うなど付加価値を求めてきている。このような世情からSNSが注目されてきたのも自然なところかもしれない。そして、mixiと似たような基盤サービスが幾つも登場してきたことが、さらに話題を集めている理由でもある。

 前述のように、ブログなどのサービスがインターネット全体に広く開かれたサービスであるのに対し、SNSは登録したユーザーのみに公開されるものだ。いわば、比較的閉じられたサービスといえる。SNSで展開される内容は、Googleなどの検索サービスでも引っかからない。しかし、閉じられているが故に、表立って書きづらい内容が書き込まれたり、その中のコミュニティーでは「関係の密度が高い」やりとりが展開されるケースも少なくない。

 この、閉鎖的なコミュニティーである部分が、ユーザーの本音を引き出せる可能性があるのではないか――おそらく、これも注目される要因だろう。もちろん、mixiがユーザー数を増やし、一般メディアでも紹介されていくにつれて、SNS自体の認知度が上がったことも見逃せない。事件などが起きた時のメディア報道で、「ブログ」としてmixiで公開している日記が引用されるケースまで出てきたくらいだ。

 登録ユーザーで、いろいろな知人や友人がつながり、さらにコミュニティーなどを通じて新たな友達は増えるが、そこでのコミュニティーは閉じられたもの――ここで筆者が思い出したのは、「パソコン通信」だ。

 現在のようにインターネットが普及する前、「ネット」と言えば「パソコン通信」だった。ITmediaの読者であれば、ひと昔前は、まだまだパソコン通信がメインだった時代を覚えている人も多いだろう。パソコン通信では、自分のパソコンからモデムを介してパソコン通信のホストへ電話をかけて、アクセスする。そしてログインしてメールや、掲示板など、ほかのユーザーとのコミュニティーを図ることが目的となっていた。後は基本的に現在と変わらないが、根本的に異なるのが、そのホストにアクセスするユーザー同士でしかやりとりができないこと。あくまでも閉じられた世界がパソコン通信である。NIFTY ServeやASAHIネットなど企業が提供する大手サービスだけではなく、個人宅のパソコンへアクセスする草の根ネットまで、ありとあらゆるサービスが乱立していた。それぞれのパソコン通信内では、幾つものコミュニティーが形成されていた。なお、残念ながら多くのパソコン通信サービスはインターネットプロバイダなどに姿形を変えてしまったが、未だに健在な草の根パソコン通信も存在する。

 SNSを見ていると、どことなくパソコン通信の懐かしい感じを思い出すのは筆者だけだろうか。

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