ガバナンスの不在―。過去5年の電子政府の足取りを振り返る時、浮かび上がるのは“無責任”の3文字である。では電子政府の今後の展望をどう拓くのか。CIO補佐官ら関係者4人に生の現場の声を聞いた。今回はその前編。
――電子政府プロジェクトは、各省庁の最適化計画が出揃い、内閣官房にはGPMO(ガバメント・プログラム・マネジメント・オフィス)ができて、新たなフェーズに入りました。8月には「電子政府評価委員会」もスタートします。とりあえず、プラン−ドゥ−チェック−アクションのPDCAサイクルが整う形ですが、新体制をどう評価していますか。
A GPMOには大いに期待しています。ただし、官民わずか9人のスタッフですべてを調整できるわけじゃない。器は出来たけど、PDCAが本当に機能するかどうかはこれからでしょう。先に結論を言ってしまうと、電子政府の最大の問題は、責任の所在が不明なこと。役所の中にいて、プロジェクトの執行権限者が誰なのか、よく分からない。事務次官、官房長、会計課長、システム課長、いろいろいるんだけど、誰が意思決定しているのか極めて曖昧。
B 発注者責任がないんだよ、調達マネジメントのノウハウがないから……。発注者は、とりあえず事務次官や官房長のCIOなんだけど、彼らにそんな意識はまったくない。だいたいCIO補佐官の多くは、「こういう仕事をしてほしい」と明確なミッションも与えられてないんじゃないの。
――CIOにほとんど会ったこともないCIO補佐官もいるんですって?
A 結構多いですよ。「そこに座っていてくれればいいから」と言われているCIO補佐官もいるしね。それだけCIOの意識が低い証拠だけど、役所にはITのスペシャリストもいないんだよね。日本は諸外国に比べて、総人口に対する官僚の数が圧倒的に少ないから、例えば、IT調達にEVMS(アーンドバリュー・マネジメント・システム)を導入しようとしても、それをチェックできる行政官がいない。杜撰なシステム開発を批判されると、「だって、人いないし……」となっちゃう。だから、小さな政府がすべて最善という考え方は間違っていると思うな。
C 人がいない結果、役所のIT調達は粉飾決算に走るんだよね。開発費も運用費もよく分かりませんっていう今の実態は、粉飾決算ですよ。人事院の人事・給与システムなど、府省共通システムとしては開発失敗が明らかになって、本来なら資産除却しなきゃいけないのに、「小規模官庁用システム」なんて名目で残そうとしている。誤魔化しだよ。
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