LinuxWorld Conference & Expoでは、会場のあちこちにRAIDレベル6対応製品のデモが行われるなど、エンタープライズストレージベンダーの出展が目立っていた。
サンフランシスコで開催されたLinuxWorld Conference & Expoでは、会場のあちこちにRAIDレベル6対応製品のデモが行われるなど、エンタープライズストレージベンダーの出展が目立っていた。その一方で、ストレージ関連のオープンソースコミュニティープロジェクト(ならびにその商用版)が、バックアップ/冗長性分野の既成秩序に挑戦しようとしていた。
LinuxWorldの会場では、Cleversafe ProjectやZmandaなどのプロジェクトがブースを構えていた。Cleversafe Projectは新しい広域分散型ストレージグリッドで、ホスト側からはこのグリッドがマウント可能なドライブのように見える。Zmandaは、オープンソースのネットワークバックアップ/アーカイブシステムであるAmanda(Advanced Maryland Automatic Network Disk Archiver)の商用版。
Cleversafeは現在、2つのプロジェクトで構成される。ストレージグリッドの「Cleversafe Dispersed Storage」、そしてLinuxベースのアプリケーションからマウント可能なファイルシステムとして見える「DSGrid File System」である。
Cleversafeは、このプロジェクト用に開発された情報分散アルゴリズム(IDA)を使用してデータをスライス(断片化)する。データスライスとともに作成される「コーデッドスライス」には、元のデータ全体を再構築するために使用するパリティ値が含まれる。これらのスライスセットは「Storage Slice」と呼ばれ、インターネット上のさまざまな場所に分散保存される。
保存されたデータを呼び出すと、グリッドからスライスが取得される。ただし、すべてのスライスが必要とされるわけではない。例えば、11の部分で構成されるグリッドであれば、6個のStorage Sliceだけで元のデータを再現することができる。
プロジェクトメンバーらによると、この分散アーキテクチャは、データセキュリティ、プライバシーおよびストレージコストの改善につながるという。データのコピー全体をバックアップセットに入れ、それを移動するという方式の従来型バックアップアーキテクチャとは異なり、分散型のCleversafeスライスに含まれる情報は、それだけでは利用することも理解することもできない。このスライス技術自体が、オフサイトでの冗長性に加え、ある程度のプライバシーとセキュリティを提供する。
シカゴに本社を置くCleversafeでは、この技術をサービスとして商用化する考えだ。同社のクリス・グラッドウィン社長は、「コピー方式のストレージの場合、信頼性を高めようとすれば、セキュリティが弱まり、コストが高くなるというトレードオフが存在する。分散方式では、信頼性のレベルを自分で設計することができ、しかもそれによってコスト増を招くことはない。保存するデータが増えるわけではなく、データをより多くの場所に分散するだけだからだ」と話している。
「もちろんこの場合、パフォーマンスのしきい値は、インターネットまたはネットワークからデータを取得するスピードとなる。TCP/IPを高速化する新しい拡張機能も近く登場する見込みであり、これはインターネットストレージグリッドの潜在的パフォーマンスを高めるものとなるだろう」(同氏)
グラッドウィン氏によると、将来版のソフトウェアでは、ストレージサイトにときどきポーリングを行い、すべてのスライスを受信するまで待つのと、一部のスライスだけを取得してパリティコードを使ってデータを再構築するのとでは、どちらが速いかをその時点で判断するようにする。この計算に伴うオーバーヘッドはわずかだという。
「IDAは完全にモジュラー化された演算方式、つまり加算/減算方式を採用しており、これはコンピュータが極めて高速に処理できる。言い換えれば、データの分散と再現をほぼリアルタイムで実行できるということだ。これは、パケットをラップ/アンラップする処理よりも高速だ」(同氏)
Cleversafeのソフトウェアの最初のテストバージョンは4月にリリースされた。グラッドウィン氏によると、β版ソフトウェアを使ったデモ用グリッドは現在、研究目的で利用可能だという。このグリッドは北米11カ所のホスティング拠点を利用する。
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