DreamWorks設計の「目で見つめ合う」ビデオ会議システム、HPが商品化

日本HPは、「シュレック」「マダガスカル」などのCGアニメーションの制作で知られるDreamWorks Animationとの共同開発で生まれたビデオ会議システムを発表した。遠隔地にいるユーザーがまるでその場にいるかのような臨場感を提供できるとしている。

» 2006年08月22日 19時50分 公開
[堀見誠司,ITmedia]

 日本ヒューレット・パッカード(HP)は8月22日、遠隔地にいる人との間で仮想的に会議空間を作り上げるビデオ会議システム「HP Halo Collaboration Studio」(Halo)の販売を開始した。

 Haloは、互いに相手の顔や表情を見ながら会話したり物を示したりという多人数会議のシチュエーションを、専用に作った会議室内に仮想的に構築するシステム。遠隔地にいる相手があたかも同じ会議室内にいるかように見せるために、部屋のレイアウトをはじめ、カメラ、マイクなど機材の配置まで厳密に設計されている。

壁に3面ディスプレイと人物撮影用カメラが設置され、対話する相手の目線が視覚的に自分のほうに向いているように見せる工夫が施されている。上部にある4つ目のディスプレイには、プレゼン用のスライドなどが映し出される

 もともと米国の映画制作会社DreamWorks SKGのアニメーション制作部門であるDreamWorks Animationが、打ち合わせのための出張の機会を減らす目的で、ライブ会議システムの開発をHPに依頼したのが誕生のきっかけだった。DreamWorksは会議室のデザイン面で開発に携わっている。同社でHaloを導入、移動に掛かる時間を削減した結果、アニメーションの制作ペースが年間1本から2本に上がったという。このほか米AMDや米PepsiCo、国内ではキヤノンで導入実績がある。

 「ユーザーにテクノロジーを意識させず、相手の細かい表情までほぼリアルタイムに伝えられるHaloは、市場のどのセグメントにも属さないまったく新しいコミュニケーションツール。出張の時間を削減するだけでなく、例えば製造業の開発部門で利用すれば、製品のタイム・ツー・マーケットの短縮化につながる」と日本HPの石積尚幸取締役副社長は説明する。

 Haloのシステムは、大きく「スタジオ(会議室)」「光回線インフラ」「保守管理」で構成される。スタジオの設備には、4台の50インチプラズマディスプレイ、3台の人物撮影用カメラ、ズームカメラ、3個の高感度マイク、ネットワーク管理機器といった機材や、会議机、イス、室内照明、防音壁などの内装品が含まれている。

PCのディスプレイ出力用のコネクタ(左)と高感度マイク。マイクは半円形のテーブル上に3つ設置してあった
上部のプレゼン用のディスプレイは、天井に備え付けてあるズームカメラを使って手元の資料を映し出すこともできる。画面左側のコントロールパネルをマウスで操作しながらズームイン/アウトなどを行う

 ネットワークは、サイト間で高精細の動画や音声、データを遅延なく伝えるため、足回りは45MbpsのT3専用回線を提供する。その先には、米国やシンガポール、英国といったハブとなる拠点間でOC-12(622Mbps)SONETによる基幹ネットワーク「Halo Video Exchange Network(HVEN)」が構成されており、スタジオ間を接続する役割を果たしている。遅延を発生させないためのインフラ管理やシステムメンテナンスなどの運用保守は、HPのNOC(Network Operation Center)側でフルタイムで行う。

 日本HPでは、国内の企業向けにHaloを販売する体制として、専任のビジネス推進部隊を設置、営業活動を展開する予定。

 Haloシステムのコストは、2室導入の場合、初期設置費用約4888万円のほか、回線料金やヘルプデスクを含めた運用保守サービス費用について日本で月額約345万円、米国で月額約207万円が掛かり、ビデオ会議システムとしてみると決して安くはない。同社では海外拠点とのコミュニケーションを頻繁に行う企業やアウトソース/オフショア開発を積極展開する企業などがターゲットユーザーと考えており、「企業のグローバル化、製品開発のリードタイムの短縮化が一層進む中で、確実に需要が見込める」と新しいツールの売り込みに強気な姿勢を見せた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ