IBMの次なる一手は?(2/2 ページ)

» 2006年08月25日 18時05分 公開
[Scott Ferguson and Renee Ferguson,eWEEK]
eWEEK
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 さらに慎重な見方をしている専門家の意見も紹介しよう。

 ニューヨークに本拠のあるMerrill Lynchでアナリストとして働くギャレー・ベッカー氏は、「ISSのマネージドセキュリティサービス事業や、X-forceのセキュリティインテリジェンスリサーチ技術は、IBMの現在のビジネスに組み入れる価値のあるものだと思う」と書いている。

 「戦略上の意義がいまひとつはっきりしないのは、ISSのアプライアンス事業だ。同社のアプライアンスのほとんどが、基本的にはネットワーキング製品に分類されるインラインアプライアンスなのである」(ベッカー氏)

 IBMは皮肉にも、最大のライバルの1つであるOracleと同じ道を歩もうとしているように見える。Oracleはこの2年間で24回もの企業買収を繰り返し、データベース界の雄から、データベース、ミドルウェア、アプリケーション分野をまたぐ巨大勢力へと転身を遂げた。

 一方のIBMは、2001年以降、ソフトウェア事業部だけでも39の企業を併合し、収入基盤を低迷していたサービス部門からミドルウェア部門へ移行させることに成功した。昨年から今年にかけては、3番目、4番目、5番目に規模の大きな買収契約が締結されたが、これらはすべてオンデマンド戦略の強化が目的だった。具体的には、2005年3月にAscentialを11億ドルで、同年8月10日にFileNetを16億ドルで、今週に入ってISSを13億ドルで取得している(同社のソフトウェア部門が史上最高額で買収したのはLotusで、その次がTivoliだった)。

 PeopleSoftおよびSiebelをそれぞれ100億ドル、58億ドルで買収し、ERP(Enterprise Resource Planning)分野とCRM(Customer Relationship Management)分野を大幅に強化したのは例外的な動きだったが、Oracleもやはり、近年はインフラストラクチャ面の拡充に力を注いでいる。

 両社の買収戦略に共通する点が、サービスベースアーキテクチャを軸とするインフラストラクチャ製品の補強なのだ。

 ボストンに本社のあるBoston Corporate Financeの財務アナリスト、ブラッド・アダムス氏は、「(IBMによる)FileNetの買収は、われわれの業界では驚天動地の出来事だった。FileNetは、コンテンツ管理およびビジネスプロセス管理(BPM)のトップベンダーで、(IBMの)『WebSphere』戦略下のソリューションとも互角に張り合ってきた。これまでは、多くのプロセス型アプリケーションに統合機能が追加されてきたが、現在はその上にセキュリティが実装されるようになっている」と話している。

 ISSの買収に関して確実に言えることは、IBMの幹部が成長の可能性を固く信じているという点だ。

 電話取材に応じたIBM Global Servicesのインフラストラクチャ管理サービス担当ゼネラルマネジャー、バル・ラーマニ氏と、ISSの最高経営責任者(CEO)、トム・ヌーナン氏は、ユーザーが望んでいるのは、ネットワークに障害が発生したり、感染が広がったりする前にセキュリティ問題を食い止めるソリューションだと説明した。

 またヌーナン氏は、オンデマンドプラットフォームでは全体的なセキュリティの確立が求められているが、それこそIBMとISSが提供しようとしているものであると主張した。

 IBMでは、ISSの製品はGlobal Services部門を介して顧客に販売し、自社のソフトウェア販売はTivoli部門に管轄させる意向だという。

 IBMは、拡大を続ける同社のセキュリティ事業への取り組みを継続するため、買収完了後もISSの1300名におよぶ社員をそのまま雇用し、会社を元の拠点であるアトランタに置くと、ラーマニ氏およびヌーナン氏は話している。

 ラーマニ氏に、IBMの今後の展開とさらなる買収の可能性について直接尋ねたが、これには明確な回答を得られなかった。

 「われわれは、常にビジネスチャンスを探っている」(ラーマニ氏)

 Gartnerのインターネットセキュリティ担当副社長であるジョン・ペスカトーレ氏は、IBMは単に収益増加だけを目的として、無作為な買収を繰り返してきたわけではないと考えている。また、IBMの事業にISSの製品ラインの一部を統合するのは、それほど簡単ではないという見解も抱いている。

 ISSのマネージドサービスはIBMの全般的な戦略によくなじむが、「Proventia」のブランド名で販売されているネットワークセキュリティアプライアンスは、CiscoやJuniperといった有力ベンダーの製品にはおよばないというのだ。

 ネットワークセキュリティ事業を成功に導くには、IBMはチャネルパートナーの整備に莫大な投資を行う必要があり、ISSのビジネスを、Tivoliのように独立した部門として運営しなければならないという。

 「IBMが(ISSの)ネットワークセキュリティ製品を生かすのは難しいだろう」(ペスカトーレ氏)

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