コラム
» 2006年08月29日 11時00分 公開

企業にはびこる「間違いだらけのIT経営」:第9回:システム完成後に問われる経営センスとは(1) (1/2)

筋違いの対策がシステムを殺し業務を危機に陥れる。システム完成後に問われる経営の各論の第一弾として、設計管理システムを取り上げる。無駄な投資を回避するための組織的取り組みを考えてみよう。

[増岡直二郎,アイティセレクト編集部]

 設計管理システムに限らないが、どこの企業でもシステム運用についての説明を求めると、いいことづくめの話が返ってくる。特に設計業務は創造的部分があって、かつ理解するために専門的知識を必要とする場合が多いので、説明する側のペースで話が進みがちとなる。そうすると、聞く側も「いいことづくめ」の話に疑問をはさむ余地が少なくなってしまう。

 その結果経営判断を間違えたり、そのタイミングを誤ったりすることになる。ある企業の例を引用しながら、設計管理システムで陥りやすい誤びゅうを実務面から指摘し、誤った経営からの脱皮を考える。なお、ここでは主に設計手配業務上のテーマに絞る。

BPRコード統一が不完全

 一連の設計業務をコンピュータ化して1年経つが、うまく稼働しているのかどうかさっぱりわからないのでちょっと見てくれないかという依頼が、A社社長から筆者にあった。

 A社は年商約100億円、従業員300名ほどの電気機器メーカーで、設計システムはERPをベースに若干カスタマイズした。設計手配システムは概ね稼働しているが、一工夫すれば効果が一層期待できるところがある一方、基本的なところに問題があった。A社の場合幸いにトップが気づいたが、多くの場合担当者が不満を感じて使わないまま、あるいは基本的問題を見過ごしたままシステムが突っ走って、投資を無駄にする。A社のシステムから問題点を整理し、前回分析した意識・体制、システム運用・メンテナンス、システム内容の視点から検証した。

 まずBPR(Business Process Reengineering )が不十分だったことによるが、インフラ的要素が不整備であるという根本的問題があった。設計担当役員は当初諸コードの統一を図ろうとしたが複雑なため果たせず、不統一の状態でシステム導入に踏み切ってしまった。さまざまな事情もあり、最小限図面コードと部品コードを統一すれば、設計部門だけでなく全社的に計り知れない効果が表れることを筆者は強調し、コード統一に取り組むことを強く勧めた。トップはプロジェクトを設置して本気で取り組むことを決断した。

 さらに標準作業時間(ST=Standard Time)を、設計部門がプロフィットセンターという理由で長年設定・インプットしてきたが、人情でSTを少なめに設定しがちになる。そこで客観性を期して生産技術部門に調査機能を持った係を設けて、ST設定の責任を持たせた。

 三次元CADは、設計の構想段階が便利になったというメリットがある。例えばCAD上で物理的干渉が簡単に読めるし、立体的にネジ位置を把握できるのでケアレスミスが防げる。しかしベテランの設計者は嘆く、「製図板を知らないでCADしか経験しない者は、頭で考えられなくなった」と。要するにCADに頼ることによって頭の中で三次元の世界を描くことができなくなり、画面がないと思考が停止するという。これは創造性喪失という重大事につながる。「時には画面を離れて考えることを勧めるが、どうしても安易に流れてしまう」とべテランは憂える。卑近な例でワープロを使うと漢字を忘れることに似るといえば、実状が想像できるだろう。対策は読書・文章作成・議論などの奨励という国家レベルのテーマとなろうが、まず社内で議論の機会を大いに増やすことだろう。

 以上は、意識・体制の問題と言えよう。

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