UIデザインのトータルソリューションを目指すExpressionXAMLとグラフィックツールの関係

マイクロソフトの「Expression」は、高度なグラフィック描画とWebサイト作成の機能を備え、さらにアプリケーションのUIデザインもこなすプロフェッショナル向けデザインツールで、現在用途ごとに3つのエディションが用意されている。同社がなぜこのツールをリリースしたのか、その理由を聞く。

» 2006年08月30日 08時00分 公開
[聞き手:柿沼雄一郎,ITmedia]

 マイクロソフトが送り出すグラフィックツールの「Expression」。現在はプレビュー版の配布が行われており、誰でも無償で利用可能だ。そのExpressionについて、マイクロソフトの竹内氏、関田氏に聞いた。

ITmedia 先日のGDP(Good Design Presentation) 2006にも出展された「Expression」ですが、「Web Designer」「Graphic Designer」「Interactive Designer」という3つのエディションがあります。対象ユーザーや成果物から見たそれぞれの役割は?

竹内 Web Designerは、Web標準に沿ったスタンダードなコードを生成するWebサイト作成アプリケーションです。またGraphic Designerは、ピクセル/ベクトル画像の作成、加工、編集がシームレスに行えるグラフィックツールです。そしてInteractive Designerは、Windows VistaをはじめWindows XPやWindows Server 2003のユーザーインタフェース(UI)で利用されるWPF(Windows Presentation Foundation)に対応したアプリケーションを作成するのに最適化されたツールです。タイムラインを使用したアニメーションなどの作成ができ、それを「XAML」という言語で出力します。

デベロッパー&プラットフォーム統括本部 デベロッパービジネス本部 プロダクトマーケティンググループ シニアプロダクトマネージャ 竹内洋平氏

ITmedia XAMLの役割とは?

竹内 デザイナーのクリエイティビティと開発者の生産性を両立させる“橋渡し”的役割を持つマークアップ言語です。デザイナーはExpression Interactive DesingerやGraphic Designerを使ってUIを作ります。開発者はVisual Studioを使ってアプリケーションのロジックを作ります。両者の作ったものはXAMLによって結び付けられ、一つのアプリケーションとして完成します。「デザイナーと開発者が共同で作業できるソースコード」とも言えますが、その存在は意識せずにそれぞれの作業に専念できます。

ITmedia マイクロソフトがグラフィックツールをリリースする理由とは?

竹内 Vistaのリリースと同時に、WPFを利用したグラフィカルなアプリケーションの作成をしていただきたいからです。そのためのトータルソリューションとしてExpressionを提供するという意味があります。Webデザインという意味では以前のFrontPageを受け継ぐ形ですが、後継というよりはまったく新しい製品と考え、ブランドとして名前も新たにExpressionとしています。

 3つの製品(エディション)を揃えることで、トータルなデザインツール環境を提供でき、XAMLによるほかの製品との互換性をも確実に保証できるということが強みです。

ITmedia なぜ、よりリッチなUIや新しいUX(User eXperience)が必要なのでしょう?

竹内 より多くの情報を可視化して提供することで、ユーザーの決断を早くしたり確実に行えるようにできるからです。例えば飛行機の運航を管理する航空交通管制機器などのアプリケーションでは、リッチなUIを用いることで高い一覧性が実現でき、より安全な航空機の交通管理ができるようになります。また、商品カタログなどに利用すれば、消費者へ商品に関するより多くの情報を提供することができ、購買意欲の増大につなげることもできます。

関田 「より多くの情報をより手軽に手に入れることができるようになる」、こうした方向性はプラットフォームを提供するわれわれではなく、ユーザーが求めた結果だと考えています。まさにユーザーセントリックなコンピューティングの時代が訪れようとしているのではないでしょうか。

デベロッパー&プラットフォーム統括本部 戦略企画本部 Webプラットフォーム推進グループ マネージャ、エバンジェリスト 関田文雄氏

ITmedia アプリやWebがリッチなUIを持つようになると、利用できる端末(デバイス)が限られてくるのでは?

関田 すべてのデバイスがまったく同じUIを持てるわけではなく、それぞれに適したものがあるはずです。WPFにはサブセット版に近いWPF/E(WPF Everywhere、仮称)という機能を絞ったものが用意されます。また、クライアントソフトウェアもブラウザにするかWindowsアプリケーションにするかといった選択ではなく、ユーザーが本当に使いやすいと思えるUIを採用していくという時代になるでしょう。ExpressionはこうしたUIを作成するために生まれたツールなのです。

ITmedia ユーザーへの支援やパートナービジネスの可能性は?

関田 ユーザーの方にはまずテクノロジーを理解していただき、それからツールを利用していただくという順序で、さまざまな支援や正確かつ迅速な情報提供を行っていく方針です。またパートナーの方々には、すでにご試用いただき、ソリューションとしてのご提供を予定されているところもあります。また、XAMLを出力するためのアドオンソフトといったような展開もあります。もう少しすれば、より詳しくご紹介できるようになると思います。



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